スティーヴン・ミルハウザー 『エドウィン・マルハウス』

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「大人のための児童文学」と言えるのかも。アメリカの作家、ミルハウザーのデビュー作。アメリカ文学史上に名を刻むほどの傑作小説『まんが』を書き残し、11歳で夭折した天才作家エドウィン・マルハウスの生涯を、親友であるジェフリー・カートライトが描いた伝記小説、という体裁の作品。「子供が未知の世界に接した時の新鮮な驚きや興奮が、この小説には満ち溢れている」。訳者による解説にあるこの言葉が、本書の良さを的確に表している。書いている(というテイ)のジェフリーの描写は(子供なのに)異常に密度が高く、しつこいぐらい細かく見たもの、聞いたものを文字に落とし込んでいる。エドウィンとジェフリーが熱狂したアニメーションに関する記述なんか、読んでいて、映像そのものが頭のなかで再生されるぐらい。過ぎ去った子供時代の熱狂を再体験させてくるよう。

そういう楽しい面がある一方で、エドウィンの初恋相手であったり、ノルウェーからやってきた孤独な転校生であったり、エドウィンの人生に影響をあたえることになる人物たちが小説から退場していく様が「なんでこんなに暗いのか……」と驚いてしまう。すごい二面性をもった小説。

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