スーザン・ソンタグ 『隠喩としての病い』

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隠喩としての病い
隠喩としての病い
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スーザン・ソンタグ
みすず書房
売り上げランキング: 317,533
スーザン・ソンタグの『隠喩としての病い』を読む。この批評家がどういう人なのかよく知らず、難しいことを書く人なのだろう、と思っていたのだけれど、この本はそんなに難しい本ではなかった。ジャンルとしては、文学史的、というか、インテレクチュアル・ヒストリーに隣接するような本だと思う。結核と癌というふたつの「死に至る病」が文学のなかでどのようなメタファーとして用いられてきたのか、をたどっていく。

原書「Illness as Metaphor」が出版されたのが1978年。本書に綴られた癌に関する記述は、現代とはちょっと環境が違うことを意識させられるが(当時、欧米でも癌患者に対する告知が普通におこなわれていなかったらしい。インフォームド・コンセント以前のお話であるようだ)、かつては結核、そして癌が、数ある病のなかで特別扱いされていたことを強く意識させられる。これらは文学的な病である、と言えるのだろう。結核 = 死の病、という文化は薄れつつあるとはいえ(それは部位にもよるけれど、癌にも同じことが言える。ただし、癌の場合『生存率』というものが明示されることによって、また別な問題を抱えているけれど)現在においても、文学的修辞としての結核は現役であることは、昨年公開された『風立ちぬ』の例を見ても明らか。ただし、その隠喩によって意味される内容は明らかに変容している。結核によって性欲が増進する、とか性的魅力が高まる、とか言う迷信じみたものがあった……などの記述を大変面白く読んだ。

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綿矢りさ 『かわいそうだね?』

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かわいそうだね? (文春文庫)
綿矢 りさ
文藝春秋 (2013-12-04)
売り上げランキング: 81,821
『かわいそうだね?』の文庫には表題作と「亜美ちゃんは美人」という2つの中篇を収録している。どちらも2011年の作品で、わたしが読んだこれ以前の作品は2006年初出の『夢を与える』となる。それで、5年のあいだに、スゴい作家になっちゃったな、と驚嘆した。

人間の描写に強烈なブラックネスが混じっているところが、綿矢りさの小説の好きな部分だった。彼女は、冴えない人間を、悪意さえ感じるほど鋭く、柔らかい表現をつかって描いてしまう。時速200kmぐらいでマシュマロを投げつけて、人を殺す感じの、そうした凶悪さがすごく好きだった。ラッセンに言及して喜んでいる感じとか、ニューエイジに真面目に言及して喜んでいる感じとか、そういうねじれた感じにも近いかもしれない。そして、今回読んだ2つの作品は、さらにドライヴがかかっていて、綿矢りさの悪さが前面に出ている。読んでいて息ができないぐらい笑ってしまった。

でも、それだけじゃなかったんだよ、恐ろしいのは。なんだかそのブラックネスに、安野モヨコやよしながふみのような、どこかに転がっていそうな、読者の共感を生みそうなストーリーテリングが備わっているではないか。キャラクターの作り方も良ければ(必ずひとりは村上春樹の小説にでてきそうな感じの人が配置されている気がする)、ひとつひとつのエピソードが小気味よく配置され、繋がっていき(中篇のサイズ感が功を奏しているのかもしれないが)どちらも見事な構成になっている。序盤・中盤・終盤と隙がない。ホントに終わりまでしっかりしているんですよ。「亜美ちゃんは美人」なんか、ちょっと感動しちゃいましたね……。主人公が、自分とはまったく違っているハズの他人のなかに、自分を見いだすような、ハッとする描写があってねえ……。すごく良い。

ふざけてる感じもありつつ、しっかりと読ませるテイストは、なにかNHKの深夜にやってるドラマに近いものを感じた(決して民放ではない)。そして、すごく映像化しやすそうな作品だとも思う。でも、ただ単純に書かれていることを映像化しちゃったら全然面白くなさそうで、その文章から映像へのコンヴァートできなさにまた綿矢りさの特別な才能を感じたりもする。あと今回、初めてこの作家を「同世代の人っぽいな〜」と思った。

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田付貞洋(編) 『アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種』

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アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種

東京大学出版会
売り上げランキング: 211,410
本邦初のアルゼンチンアリ研究書を読む。これは大変に面白かった……!

本書を人に紹介してもらうまでわたしもアルゼンチンアリなどぜんぜん知らなかったのだが、アルゼンチンアリは、在来アリを駆逐しまくってさまざまな問題を発生させているのだという。しかし、体長約3mm、毒針があるわけでも協力な顎をもっているわけでもないこのアリが、なぜ、生存競争に勝てるのか。そこにはアルゼンチンアリの特異な生態がある。

アリの卵を生む女王アリはひとつの巣に一匹と想像しがちだが、アルゼンチンアリはひとつの巣にたくさんの女王アリを有する多女王制の社会を持つ。とにかく子供を生みまくり、ワーカーをたくさん巣に持つ。アルゼンチンアリの優位性はまず、この数にある(餌が少なく活動量が落ちる冬は、ワーカーたちが女王たちを殺戮することで生産調整をおこなうという社会性も恐ろしい)。

さらに普通のアリなら同じ種類でも生まれた巣が違えば、縄張り争いが起きて、同種のなかでも増殖に抑制がかかる。これに対して、アルゼンチンアリは巣が違ったとしても闘争が起きず、むしろ協力関係を結び、巨大なコロニー(スーパーコロニー)を形成する。これによって数の優位性はさらに高まっていく。スーパーコロニーがあるところにはもはや在来アリはほとんど見られなくなるぐらいアルゼンチンアリの侵略力はすごいらしい。ちなみに天敵らしい天敵もまだ見つかっていない。

すでにヤツらは日本にもやってきており、山口県岩国市ではアルゼンチンアリが大量発生しており、住民を困らせているという。家屋へとどこからともなく入り込み、生ゴミだとか食品だとかにアリがたかりまくっているとか、夜布団のなかに入ってきて咬まれるとか聞けば、おぞましすぎるし、嫌すぎるので大変だ。アルゼンチンアリの行列は横幅が2-3cmぐらいの帯状になるのだが、この写真も、苦手な人がみたら「ざわわ……っ」と鳥肌が立つと思う。

しかし、ここまで読んでも「在来アリがいなくなったぐらいで、生態系になにか影響があるのか?(だって、たかがアリでしょ?)」と思う人が大半だと思う。だが、影響大アリなのだ。アリだけに!!

アルゼンチンアリは人海戦術によって他の小動物を襲ったりもする(虫だけじゃなくて、鳥のひなとかトカゲとかネズミとかも食べるらしい)。また、種子分布をアリに依存している植物にも影響がある(アルゼンチンアリは植物の種をあんまり運んでくれない)。さらにアルゼンチンアリはアブラムシが出す甘い汁が大好き。なので、アブラムシを守りまくってしまい農業にも影響がでる。ミツバチが集める花の蜜もアルゼンチンアリが食べ尽くしちゃうのでハチミツもとれなくなる……と影響大アリなのだ。アリだけに!!(繰り返し)

編者の田付貞洋を「元締め」とする研究グループが、この驚怖の外来種をどうにか駆逐しようと奮闘する様子もあっついドキュメンタリーのようで面白い。2003年におこなわれた岩国市での駆除実験では、真夏に昼夜連続合計30時間にわたって「1時間ごとに1人がアリを1000頭以上も数える」という苦行をされたなど「それはアリ地獄だ……」と思ったし、原産国アルゼンチンで路上調査をしていたら爆弾を仕掛けているテロリストと間違われて10人以上の警官に銃を突きつけられた、などととんでもない記述もある(思わず、笑ってしまったが)。研究書だし、比較的高価な本だけれども、とくに専門知識がなくても面白く読めるので、広く読まれると良いな、と思う。


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眞木蔵人 『アイ アム ベックス=スプレッド ザ ラブ』

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アイ アム ベックス=スプレッド ザ ラブ
眞木蔵人
白夜書房
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最近読んで一番笑ったし、痛快だった本(もう最高すぎて前作も買ってしまった)。眞木蔵人の言葉のスゴさについては「真木蔵人 高橋源一郎」などで各自ググっていただくとして、愛と怒りに満ちた本である。思想的にはあんまり共感できる部分はないけれども、彼のアナロジーの力と世界の観察力、自然の観察力にはリスペクトを禁じえない。鋭さでいえば、菊地成孔以上のものを持っているように思う。痺れるポイントをイチイチ引用したいぐらいだが、是非とも書店(or Amazon)にゴーですよ。

原発事故以降、やはり怒りモードの発言が増えていくのだが、基本的なスタンスがブレてないし、ブレてないから極端な怒りの表出にならない。言葉はやや激しいんだけれど、この人はとても静かに怒っている感じがする。放射能で発狂してしまったような人は多いし(たとえばメロリンQの人とか。奇しくも彼もサーフィンをする人だが)、各種文化人・芸能人の原発問題発言は星の数ほどあるけれど、そのなかでも一番シックリきた発言が眞木蔵人のものだとは我ながら驚き。2014年ベスト新刊はこれで良いんじゃないか。

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集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#17 バルガス=リョサ 『ラ・カテドラルでの対話』

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ラ・カテドラルでの対話 (ラテンアメリカの文学 (17))
バルガス=ジョサ
集英社
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2009年から続く「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む企画も、このバルガス=リョサの『ラ・カテドラルでの対話』を読み終えることで残り1冊となった。こちらはペルー初のノーベル文学賞受賞者の大作で(シリーズ中もっともヴォリュームがあるものだと思う)コルタサルの『石蹴り遊び』ほどではないものの、なかなか技巧的には凝った小説。

新聞記者の主人公(白人)と、かつて主人公の家で使われていた黒人運転手が偶然再会し、酒場での昔話に花を咲かせている、というのが大枠なのだが、その対話のなかでは複数の時間・場面が複雑に挿入されたり、入れ替わったり、とややこしい。でも、それが極端な読みにくさを生んでいるわけではなく、長くてなかなかつらいけども面白く読んだ。こういう風に複数の時間軸がフーガみたい絡んでいる小説って『ゴッド・ファーザー PART II』みたいだな、と思う。ちょうどバルガス=リョサの『楽園への道』もそんな構成の小説だ。場面の移り変わりの回数を極端に多くした『ラ・カテドラルでの対話』は、タランティーノの映画に準えるほうが適切かも。とくにその技法が上手くいっている箇所では、複数の場面の会話文が応答しあい不思議なドライヴ感がある。こういう話の見せ方もあるのか、と感心してしまった。

しかし、話としては特にすごいわけではない。基本的には主人公の新聞記者のビルドゥング・ロマンスなのだ。そのなかには、金持ちのおぼっちゃん(主人公)が学生時代に左翼に目覚めちゃう、きっと日本でもあったであろう「時代」が書かれている。このへんはとても青春小説っぽい。「マルクス主義が〜」とか言いながらも、そのなかで恋愛があったり、思想と関係ないいざこざがあったり、左翼もテニサーや部活とかわんなかったんじゃないか、と思った。それとあわせて、政治的な陰謀だの殺人事件だの、金持ちの頽廃だの、差別だのが描写されるんだけれども、いろんなつながりが見えていくと、火曜サスペンス劇場とか2時間ドラマみたいなのだ。2時間ドラマを5本ぐらいより集めて、タランティーノが編集したらこんな感じなのではないか。内容よりも、複数の時間がどこかで交差するその瞬間の驚きありきの小説でもあるのかも。

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ロード・ダンセイニ 『時と神々の物語』

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時と神々の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ
河出書房新社
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久しぶりにダンセイニを読んだ(ブログの過去ログを検索してみたら2009年に『世界の涯の物語』『夢見る人の物語』を読んでいたらしい)のだけれど、いやあ、実に良いな、と思ったね。この作品集には処女作『ペガーナの神々』を含む初期作品、それと晩年の短編を多く収めている。『ペガーナの神々』はダンセイニによる神話の創造だ(創造の神話ではない)。そこには明瞭な意味や教訓らしきものはハッキリと提示されているわけではない、というか大半が「なにがかかれているのかよくわからない物語」である。だからこそ、それは神話らしいファンタジーになる。マーナ=ユード=スーシャーイ以外は、神々さえも儚い世界で展開されるお話は、高貴なる退屈さ、とでも言うべき独特な味わいがある。これはもう「貴族」にしか書けない話だと思う。日銭についてあれこれ思いを巡らす凡夫には、到底生み出せなさそうだ。晩年の短編は、嘘とも誠もつかない愉快な話も多くて、これはこれで優雅な愉しみがあるのだなあ。

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John Frusciante / Enclosure

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Enclosure【ボーナストラック+2、高音質Blu-spec CD2、超ロングインタビュー、歌詞対訳付】
ジョン・フルシアンテ
BounDEE by SSNW (2014-04-08)
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こないだ読んだジョン・フルシアンテのインタヴューが気になったので新譜を聴く。なんでも最近はエレクトロニックな音楽に興味津々だそうで「ジェイムス・ブレイクみたいになってるのか!?」と思ったが、そこまで大胆にモード・チェンジが起こっているわけではない。モダンなEDMを取り入れている、というよりかは、想起させられるのはAphex Twinみたいなドラムンベースで「それ、ちょっと古くないか」という感じであった。リズム・トラックの作り方自体はなかなかカッコ良いのだが、時代遅れ感はいなめない。結局、ソング・ライティングの根本的な部分は変わっておらず、内省的な曲を作るSSWが一昔前のEDMを取り入れてみました……的な感じである。とはいえ、その変わらない根本は安心して旧来からのファンは聴いて大丈夫だ、という証明でもあるわけで、なぜ、こんな内側に内側にヴェクトルが向かっている人が、レッチリのようなスタジアム・バンドに加入していたのかを改めて不思議に感じてしまう一枚でもある。

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諸星大二郎 『夢見村にて: 妖怪ハンター 稗田の生徒たち』

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「妖怪ハンター」シリーズの新刊は10年ぶりらしい……。短編集やら西遊記原作の漫画やらがポコポコと知らないあいだにでている感じなので「諸星大二郎の新作が読めるなんて!」という感慨はとくにないのだけれども、還暦過ぎでこの仕事ぶりはやっぱりすごい、と思った新作。すごく面白かったし、やはり新しい作品になればなるほど、漫画が上手くなっているのが恐ろしい(これは今っぽいコマの見せ方を取り入れてる、ということなのかも)。しかし、ミステリーとしての話の見せ方とか、構成力とかもすごくて、表題作の「夢見村にて」(この作品、村上春樹っぽい設定だ)なんか「妖怪ハンター」シリーズのなかでも屈指の作品なのでは。

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増田四郎 『都市』

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都市 (ちくま学芸文庫)
都市 (ちくま学芸文庫)
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増田 四郎
筑摩書房
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都市の建築史の本かと思って手に取ったのだが、全然違っていた。なにかというと都市の形成史であり、西洋でどのように「市民意識」が形成されていったのか(そしていかにして日本では『市民意識』が育たなかったか)を辿る本。結構古い本だし、著者の専門はヨーロッパ経済史だったせいか思想史・文化史的な描写はペラいが(なんというか西洋の思想が一枚岩のキリスト教文化になっている感じがある)、ホモ・エコノミクス的人間観にもとづく歴史描写はなかなか面白い。

著者によれば近代都市の形成と近代の市民意識の形成は、不可分であり、同時平行で進行している。つまりは商業や工業で成功したブルジョワジーによって都市は発展し、また近代市民意識は旧来的な特権階級にアゲインストするブルジョワジーたちの同族意識・共闘意識が基礎となる。ブルジョワジーたちは、やがてプロレタリアートから闘争をふっかけられる立場になり、市民意識にも変化が発生するわけだが、要するに西洋の市民意識とは、そうした階級闘争のなかから生まれてきた仲間意識、と説明される。

これに対して日本だとか東洋だとかは、全然市民意識がないからダメだ、都市も未熟だ、と著者は言う。日本の近代の始まりだって、貧乏していたサムライたちが起こした革命でしょ、農民たちが一念発起して起きたわけじゃないし、要は階級の上のほうが別な人にすげ変わっただけ。日本の市民なんていうものは「はい、あなた方は今日から『市民』なんですよ」と言われて始まっているわけだから、てんで身勝手でどうしようもない、とのことである。「自分たちのコミュニティを良くしよう」という意識も全くないし、一貫した善悪の観念もない。いい加減だ。

読んでいて、あー、昔の人の西洋コンプレックスの発露か……と思わなくもないのだが、まあ、思い当たる節はある。日本で「市民」とか「公共」とかいう概念が持ち出されるときって、人によってすごくいい加減で、結局のところ「自分は正しいんです!」と主張するときに「いや一般的に考えたらさ……」とか「公共の場ではさ……」とか都合良く持ち出されるだけのような気がするんだよな。

個人のあいだでつながりがないわけじゃないけれども、めいめいの快/不快で繋がるだけでしかない。「アレが(アイツが)不愉快だから、不愉快なモノ同士で一緒に叩いてやろう」とか、そんな感じで(そういうつながり方って、インターネット上でも露骨に現れてるときがありますよね)。昔の日本は近所付き合いがあって良かった……とか『三丁目の夕日』のような人々のふれあいが……とか言う「昔は良かった」論っていまだに見ますけど、全然良くなかったじゃん! とも思う。

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鈴木有李 『ヤカラブ』

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ヤカラブ
ヤカラブ
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鈴木 有李
ミリオン出版
売り上げランキング: 867
「全国の女子高生が号泣!」と嘘くさいキャッチが踊る(ケータイ)小説を読む。「輩(ヤカラ)」たちの「Love」、それが「ヤカラブ」……らしいのだが、地方文化・ヤンキー文化が描かれて、現在各方面で活躍中のギャル系モデルさんの過去の体験をベースに書かれた、という部分はケータイ小説の王道をいく。別に大した話はない(妊娠中に彼氏が逮捕されて中絶、とか、腕にお互いの名前を彫りあった、とか)し、ひたすら退屈な本だったが、ひとり、厳格なモルモン教の伝道師の両親(本書のなかではキリスト教、とぼやかして書かれているが、仕事の関係で『ユタで生まれた』、アルコールやカフェインもNG、といったらモルモン教しかない)と退屈な学校に反発し、家出……からの、渋谷のクラブでダンサーとして人気を集め、かつ、毎晩毎晩クラブで男を狩る、という女の子は痛々しくて良いな、と思った(MIYAVIに憧れているところもポイントだ)。宗教的な抑圧からの逃走がなんかプリンスみたいだし、彼女はそのうちひたすら破戒と堕落の道を歩んだところで、回心する出来事があれば、大きく針が逆に振り切れて宗教にハマッてしまうのではないか。

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Squarepusher x Z-Machines / Music for Robots

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Squarepusher x Z-Machines : Music for Robots [アーティスト本人による解説付 / 国内盤] (BRE49)
Squarepusher スクエアプッシャー
BEAT RECORDS / WARP RECORDS (2014-04-05)
売り上げランキング: 864
Squarepusherの新譜を聴く。今回はアルコール飲料ブランドのプロモーションで制作された楽器演奏ロボット「Z-Machines」を使ってのプロジェクトだそうである。人間には演奏不可能な表現を可能にするロボット……という謳い文句が気になって手に出してみたが、うーん、これ、そんなに人間には演奏不可能な感じがしなくないか……。Squarepusherことトム・ジェンキンソン曰く、かねてからリゲティやナンカロウの自動ピアノ作品を愛聴していて……とのことだが、たしかにそうした作曲家たちとのノリを感じなくもないけれど、機械の使い方を間違っているのではないか、と思う。「機械に人間的な表現ができるか」って使い方はじゃなくて、人間には演奏できない未聴感のある音楽を聴かせてほしかった。こうして表現可能な領域が拡張されても、人間の想像力が追いついていない感じがするのはとても残念なこと。機材自体は面白いから、別な人が使った結果も聴いてみたい感じはする。

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Leo Tomassini / Arpoador

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ブラジル本国では「チェット・ベイカー meets ジョアン・ジルベルト」と評されているらしいレオ・トマッシーニの新譜を聴く。これは大名盤。声質が非常にカエターノ・ヴェローゾに似ており(ちょっと声は低いが、息子のモレーノ・ヴェローゾよりも似ている気がする)かつ、アート・リンゼイがプロデュースしていた時期のカエターノからエグみやトゲを抜いて日和らせマイルドなアコースティック・サウンドをフィーチャーした……みたいな、もし今カエターノがオルタナっぽい方向に進んでいなかったら……IF……もし……もみたいなアルバムである。しかも、カエターノ本人もヴォーカルで参加してて、どっちかわからん、かつペドロ・サーやドメニコなどカエターノやOrquestra Imperial周辺の面々も加われば、買わないわけにはいかないでしょうが……!

と、冒頭からカエターノ、カエターノと誰のアルバムについて語っているのかわからない感じだが、ホントに素晴らしい。ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンを彷彿とさせるホーン・アレンジで幕をあけたかと思えば、ペドロ・サーのフリーキーなギターも聴こえるし、オーセンティックなサンバやボサノヴァまで様々な音楽が次々に飛び出してくる。そして色々やっているのに、決してガチャガチャしておらず、めちゃくちゃに落ちついた雰囲気で聴こえるのだから不思議だ。澱が沈んでる感じ、なんですかね。とても豊穣な音楽。

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