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7月, 2014の投稿を表示しています

九鬼周造 『「いき」の構造』

「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫) posted with amazlet at 14.07.28 九鬼 周造 岩波書店 売り上げランキング: 22,078 Amazon.co.jpで詳細を見る タイトルは知っているし、もしかしたら大学受験の模擬試験とかで読んでいるかもしれないぐらい有名だけれど、内容はまったく知らないタイトル、というのがある。ちょっと前に読んだ 西田幾多郎の『善の研究』 もそうだったが、九鬼周造の『「いき」の構造』もわたしにとっては同様のカテゴリーに位置づけられる本であった。読みはじめて驚いたね、「あ、これ『お兄さん、粋だねえ!』とかの『いき』についての本なのかっ!」と。まるで阿呆ように(あまりにタイトルだけ聞いた経験がありすぎて、内容についての興味が一切湧かなかったのだと思われる)。そういうわけで当然、著者の九鬼周造に関してもまったく知らなかったが、男爵家という高貴な血筋に生まれ、パリに渡り、ハイデガーやベルクソンに認められた哲学者とのことで、なんだかドラマティックな人であるなあ……と嘆息してしまった。 面白かったですよ、これまた。今年は昭和89年ですから『「いき」の構造』が刊行された昭和5年から84年も経っていることになる。そういう昔の人が、西洋哲学の術語を用いて、日本人に独特な美的感覚を巧みに描き出したら、大変難解なものになりそうなのに、難しく書かれているわけではない(ただ、西洋哲学の術語体系についての知識や、たまに挿入されるフランス語やギリシャ語、ドイツ語やラテン語に補足がないので、そこで挫折する人はいると思う)。昭和5年にどういう人に向けてこれが書かれていたかは気になるし、また、84年後もまだ読まれているのも違った感慨があるけど、昔の文章なのに書いてあることがわかる、って単純に考えて結構スゴいと思う。 で、「さて『いき』とは!」みたいに語りはじめる冒頭部で、いきなり「ものすごく手に入れたかったのに、いざ手に入れてしまうとめっちゃ冷めるよね」的な、あけすけに申せば「一回ヤッちゃうと、どうでもよくなっちゃうことってあるよね」的なことが論じられ、つまり「いき」とは「見えそうで見えないのがいいよね!」的な感じなんですか……? と思って大笑いしてしまった。わたしはが一番この本から得たものは「見え

ヒロ・ヒライ 小澤実(編) 『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』

知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー posted with amazlet at 14.07.24 中央公論新社 売り上げランキング: 62,847 Amazon.co.jpで詳細を見る 本書とわたしの関わりについては 既に書いた通り 。収録されている論文は編集時点ですでに目を通していたが、改めて読んでみても、やはり価値ある本だな、と思う。インターネット上で局地的に盛り上がり、一時、Amazonの売り上げランキングでも「歴史」部門の第1位に輝いた、というが、この盛り上がりが一過性のものでなく継続していって欲しいもの。 教科書的な本でもないし、初心者向けの本でもない。「中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー」という(雑に言うと)マニアックな分野の論文集でありながら、わたしが「この本を広く読まれたら良いのにな」と思うのは、自分が制作に関わっていたから、という贔屓目ばかりではなく、独立した論文が有機的に関係し、星座を作るかのような知的な世界を提示しているからである。なかでも加藤喜之さんの「スキャンダラスな神の概念」、坂本邦暢さんの「アリストテレスを救え」、ヒロ・ヒライさんの「霊魂はどこからくるのか?」という3つの論文が続く部分は、本書のハイライトだと思う。 順番に読めば「スキャンダラスな神の概念」に読者は出会うことになるが、ここで論じられるスピノザの哲学が、どのようにスキャンダラスだったのか、当時の知的な背景知識がなければ味わい損ねてしまう。しかし、もし読者がそれを味わい損ねたとしても、一度と次の「アリストテレスを救え」に進んでもらえば、スピノザが活動した当時にも支配的であったアリストテレス主義がどのようなものかがわかる。そこで「スキャンダラスの神の概念」に戻れば良いのだ。 坂本さんによるこのアリストテレス主義の整理は続く、ヒライさんの生命の発生と霊魂の関係性に関する議論にも接続される。3つの論文は、順番を変えたりしながら読むと、毎回新しい学びがあるはずだ。ほかにも戦国時代の日本にやってきたイエズス会宣教師たちが、西洋のコスモロジーや霊魂論を日本に輸入した事実を明らかにする「キリシタンの世紀」のセクションにも、アリストテレスの議論は関係する。こうして、さまざまな領域に

Negicco / サンシャイン日本海

サンシャイン日本海 通常盤 posted with amazlet at 14.07.23 Negicco T-Palette Records (2014-07-22) 売り上げランキング: 9,441 Amazon.co.jpで詳細を見る 昨年大変話題になったドラマにご当地アイドルをテーマにしたものがあったが(一切観ていない)Negiccoは新潟のご当地アイドルだそうである。なんでも地元のJAが名産のネギをPRするために結成した、とかで、我が郷土であるところの福島における「ミス・ピーチ」的なイキフンも感じられ、そのネーミング・センス的にもJA感が溢れているところが、敬して遠ざけたくなるポイントでもあるのだが、最近の地下アイドル・ブームに乗ってポッとでてきたわけでも「おらが村でも『あまちゃん』やるべ!」的なノリで出てきた方々ではなく、なんと結成から11年目という年季がはいったグループなのだそう。 日本のアイドル・ソングが、大変批評に耐えうる音楽ジャンルのひとつになっていることは重々承知であるのだが、どうも、アイドル・ソングをただ消費するだけじゃない、うむうむ、俺はわかってるぞ、的な語りが苦手であり、そうした文化に参与することすらもためらわれ、これまでレンタル落ちのきゃりーぱみゅぱみゅを回収したり、回顧的につんく♂の素晴らしいお仕事を振り返ったりする程度にとどめていたのだが、ここにきて、なぜ、Negiccoかと言えば、この「サンシャイン日本海」というシングル曲がオリジナル・ラブこと、田島貴男プロデュースだったから。 田島氏とNegiccoメンバーによる熱い対談は こちら で読める。田島氏の楽曲は上記のインタビューでも語られている通り、歌謡曲、ノヴェルティ・ソングのモダナイズ、とも解釈でき、大変面白く聴いた。が、本当に度肝を抜かれてしまったのは、カップリングの「フェスティバルで会いましょう」、そして過去楽曲のリミックスのほうなのだった。なんだこれは……すげえ、良いじゃないですか、と。乱暴に言えば、シティ・ポップスのモダナイズであり、つんく♂以降のアイドル・ソングのソフィスティケイトされた世界が提示されまくっており、とても地元PRアイドルという出自が信じられず、気がつくとわたしは、過去のリリース作品もひとしきり購入して

伊丹十三 『日本世間噺体系』

日本世間噺大系 (新潮文庫) posted with amazlet at 14.07.22 伊丹 十三 新潮社 売り上げランキング: 88,528 Amazon.co.jpで詳細を見る 伊丹十三のエッセイを読むのはこれが3冊目。今年にはいって、わが家では静かな伊丹十三ブームが続いているのだが、今回、筆者のプロフィールを読みながら、昨年は生誕80周年だったのだなあ、と思い、そして、生年の昭和8年という数字を確認して、そうか、この人は自分の死んだ祖父とほとんど同じ世代の人なんだな、と改めてたまげてしまった。書くモノの洒脱さと、亡くなったときのニュースを覚えているせいで、なんだかずっと若いままの人(自分の父親ぐらいの年代の)という風に錯覚してしまっていた。 この『日本世間噺体系』には 『ヨーロッパ退屈日記』 、 『女たちよ!』 に比べると、ずっと毒が強い文章が収録されていると思った。エッセイよりも、風刺だったり、寓話のようなものが多く、後半はずっと現実に取材したものかどうかもわからない、インタビュー記事のようなものが続いている。カッコ良い伊丹十三の文章を読み続けていたかったのに、肩すかしを食らった気分だった。が、「プレーン・オムレツ」という筆者と洋食屋の主人の対話篇的一篇は、特別に気に入った。 タイトル通り、洋食屋の主人がプレーン・オムレツの作り方などについて滔々と語っていて、筆者はそれに適当な相づちを打ったりするだけの文章なのだけれども、主人がプレーン・オムレツを作る様子を追った文章が、とんでもなく素晴らしい。間違いなく、歴史上最もリアリスティックにプレーン・オムレツができるまでを描いた文章であろう。情景が目に浮かぶようだ……という常套句を思わず使いたくなるし、もし、新聞記者やスポーツ・ライターを目指している人が「写実的描写」について悩んでいたなら、このような文章をお手本とすべきと思う。フライパンのなかで躍る卵の運動に愕然とした。

Jean-Luc Godard / Week End(ウイークエンド)

今年の夏のボーナスでは、 コンポとスピーカーを新調しただけでなく 、DVDプレーヤーをBlu-Rayプレーヤーに新調する、という散在もおこなっていたのだが、我が家にはまだBlu-Rayのソフトがなかったので、なにか適当なソフトがないかAmazonで探していたら、ジャン=リュック・ゴダールが「商業映画辞めます」宣言をしたときの作品をまとめたボックス・セットが7割引きだったため驚愕しながら購入した。 ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOX (初回限定生産) posted with amazlet at 14.07.20 IVC,Ltd.(VC)(D) (2012-05-31) 売り上げランキング: 23,001 Amazon.co.jpで詳細を見る 早速1枚目の『ウイークエンド』(1967)を観た。「商業映画辞めて、政治的な映画を撮ろうぜ」的な時期にあたると聞いていて、どんだけ退屈な映画になるのだろうか、と内心ビクビクしながら観はじめたが、大変面白い映画で安心した。ブルジョワ夫婦の退廃的メロドラマ、みたいな入りをしながら、奇天烈なロード・ムービー(メタフィクション)になっていくところがバカみたいで大変よろしい。延々と続く渋滞のシーンからはフリオ・コルタサルの短編をイメージさせ、そして死体や事故車両や炎上車両がアホほど頻出する悪夢っぽい映像はルイス・ブニュエルの映画を思い出させた(途中で、神を自称する男が奇跡を起こしたりして、ホドロフスキーかよ、とも思ったが、作品としてはこっちのほうが早い)。 こういうふざけた感じの映画も撮っているんだな、ゴダールは、と思ったけれど、真面目な人が頑張ってふざけている感じがして、完全にダダスベりになっているのだが、そこが面白いように思う。そのスベり芸っぷりは、完全に今となってはギャグになってしまったヒッピー集団や政治的アジテートを、今現在どういう風に受け止めたら良いのかよくわからない、という点で加速している。アルジェリア系移民とアフリカ系移民の男が巨大なサンドウィッチ(もちろんパンはイギリスパンではなく、パリジャンである)をモグモグしながら、その背景で長々と政治声明が語られるのは、果たして、公開当時もこれはシリアスなメッセージに成りえたのかどうか……。

3年以上かけて旧約聖書を読んだ

聖書―新改訳 posted with amazlet at 14.07.16 日本聖書刊行会 いのちのことば社 売り上げランキング: 77,160 Amazon.co.jpで詳細を見る おそらく史上最大のベストセラーであり、今後、世界を席巻する新宗教でも生まれない限り、その記録を塗り替えられないであろう書物『聖書』のうち「旧約聖書」と呼ばれている部分をこのたび読み終える。ずいぶん長いことかかった。厚めの辞書ぐらいのサイズと重さなので持ち歩くわけにもいかず(小型版もあるけれども)、寝る前やなにかこれといって読みたい本がない時ぐらいしか読み進められなかった。Amazonの注文履歴をみたら、2011年1月22日に注文、とある。そういえば、その年に大きな地震があった日の晩、自宅で妻を待ちながら聖書を読んでいた記憶がある。とくに信心深い気持ちになっていたわけではなく(そもそも信仰があって読みはじめたわけではかった)、当時はテレビを見ても不安に駆られるばかりだったから、ほとんど意味がわからない旧訳聖書のテキストを読んでいると、不思議と安心したからだった。 しかし、その「ほとんどなにが書いてあるかわからない」というところも、このテキストに向き合う気を失わせる理由のひとつである。あまりに気が向かないので「聖書がらみの本」のほうにやる気をだして読んでしまっていた。 Beryl Smalley 『Study of the Bible in the Middle Ages』 中世の聖書研究に関する研究書 長谷川修一 『聖書考古学: 遺跡が語る史実』 聖書に書いてある時代や出来事、場所の同定をおこなう「聖書考古学」という学問の紹介 山形孝夫『聖書の起源』 この本は、聖書を読みはじめる前に読んでいた いろいろ読んでいても旧約聖書の大部分は何が書いてあるかわからない。「モーセ五書」と呼ばれる創世記や出エジプト記が含まれている部分は、ある民族の歴史なんだな、ということぐらいはわかり物語的にも読める。他にも物語的な部分はあり、そういうのは割とスムーズに読めるのだが、問題は「それ以外の部分」が多すぎるのだ。また、わたしは大きな勘違いをしていて「聖書」のなかで「旧約」と「新約」は同じぐらいの分量のものだと思っていた。

夏は水出しのお茶を冷蔵庫に常備しておくとQOLが爆上がりする

普段家で(アルコールか水以外に)飲むのはもっぱらインスタント・コーヒーで、コーヒー豆を買ってきて家で挽いたり、紅茶を適度なお湯でジャンピングさせて淹れたり、といったこだわりはほとんどない。かつてはコーヒー豆からちゃんとコーヒーを淹れたり、エスプレッソ・マシーンを使ってみたり、いろいろやっていたけれど、結局、面倒になって止めてしまった。こだわりのないインスタント・コーヒー飲みとって、夏は鬼門の季節となる。インスタント・コーヒーをお湯に充分溶かすためには、お湯を使うことが求められるが、真夏に熱いものを(汗をかきながら)飲むとほんのり苦行感を味わうことになるからだ。しかし、ペットボトルのアイス・コーヒーを冷蔵庫に常備しておくのも不経済に思われ、この季節だけは水出しのお茶を作って冷蔵庫に常備してそれを飲むことになる。 水出しのお茶の代表格といえば麦茶。ポットにティーバッグをいれて放っておけばお茶になる魔法のような手軽さが魅力だが、麦茶ばかりだと飽きるので、緑茶や紅茶なども水出しで準備しておくと生活の質が爆上がりする。とはいえ、当代きっての不精であるわたしは、水出しの緑茶や紅茶のために「お茶入れパック」のようなグッズを準備するのもやりたくない。よって、どうするかと言えば、水出しコーヒー用のポットに、お茶っ葉を適当にいれてお茶を作るのだった。 ハリオ 水出し珈琲ポット8杯用 1,000ml MCPN-14B posted with amazlet at 14.07.15 ハリオ 売り上げランキング: 4,734 Amazon.co.jpで詳細を見る だんだん色がついてくるけれども、ストレーナー(フィルター)は何度も使えるし、交換もできるので良いアイテム。洗うのも楽で良い。あと水出しアイスコーヒーを作るよりも(もちろん茶葉の種類にもよるが)お茶のほうが安い。 こちらは水出しマテ茶(マテ茶にはロースト・タイプとグリーン・タイプがあるが我が家ではグリーン・タイプを好む)。マテ茶は一晩置かなくとも10分ぐらいで抽出が終わるのですぐ飲める。茶葉は、1リットルなら大さじ1杯半〜2杯ぐらいぐらいあれば良い。よく冷やして、少しライムを絞って飲むと大変風流である。

Homecomings / I Want You Back EP

I Want You Back EP posted with amazlet at 14.07.13 Homecomings SPACE SHOWER MUSIC (2014-03-19) 売り上げランキング: 20,332 Amazon.co.jpで詳細を見る この土日は、金曜日の夜に、たまたまTwitterのタイムラインで知った京都のバンド、Homecomingsしか聴いていない。ネオアコ系、青春系ギタポなどという乱暴な括りで語ってしまえば、それだけなのだけれども、The Smiths、Orange Juice、Belle & Sebastian、The La's ……などなどの様々な人の、様々な若かりし頃を彩ったであろうバンドの音を彷彿とさせ、まるで自分の学生時代も、このバンドが奏で、歌っている甘酸っぱい風景に彩られていたかのように錯覚させてくれるような素敵な音楽である。たとえば、バンド・サークルに所属して、2年目の夏に結成した男3人女1人のバンドで、橋本愛演じる女の子メンバー(担当楽器はベース)を取り合う、みたいなそういう記憶を捏造し、単位や試験や就職活動がなければ、そういう感じの若い頃に戻ってみたい……と思った。 Homecoming with me? posted with amazlet at 14.07.13 Homecomings SPACE SHOWER MUSIC (2013-06-12) 売り上げランキング: 26,346 Amazon.co.jpで詳細を見る 昨年出たデビュー・アルバムもあわせて聴いている。 インディー・ロック好きの友人複数名に「Homecomings、すげえ良いです。好きすぎてちょっと泣きました」と伝えたところ、彼らはすでに聴いており「なんだよ! もっと俺に『黙ってこれを買え!』とかアピールしてくれよ」と思う。ネット上で公開されているいくつかのインタヴューを読んだら、このバンドで天下獲ってやるぜ、的なギラギラ感がなく、それゆえにこういう音が生まれてきたのかもしれないし、ただ、このバンドはこの一瞬の煌めきで終わってしまうのかもしれない、という予感も感じさせてもくれる。

英語をマスターしたわけでもない会社員がラテン語とフランス語の勉強で気づいたこと

こないだヒドく憂鬱な気持ちのままフラフラと本屋に足を踏み入れたら、語学教材コーナーの前で、ふいに「そうだ、フランス語でもやるか」という気がおきて、文法書を一冊買おうと思った。わたしはもうすぐ30歳になる。とりわけ暇な身の上でもないし、なんでもかんでも手を出したとしても、すぐに身に付けられるわけでもないだろう。そういうわけで、語学は英語だけに絞ろうか、それなら身に付くだろう、と思って、数年前にはじめたラテン語の勉強をサボる言い訳を作っていたのだが、どうせ、英語だけに力を注いていたとしてもグローバル人材になるわけでもなく、逆にあれこれ手を出して、余生を無為に過ごすのも良いのではないか、と考え、さらにラテン語の基礎単語をまとめた教材もあわせて購入した。こうして、わたしは、一瞬の出来心のようなもので、ラテン語とフランス語を同時に勉強しはじめてしまったのだった。 買った教材はどちらも長いこと使われていそうなもの、特に評判は調べずに選んだ。 基本フランス語文法 posted with amazlet at 14.07.10 土居 寛之 田島 宏 昇竜堂出版 売り上げランキング: 130,429 Amazon.co.jpで詳細を見る (わたしの買ったものの奥付には『2005年2月 98版』とある。まだこの教科書のなかではソヴィエト連邦が生きている) ラテン語基礎1500語 posted with amazlet at 14.07.10 大学書林 売り上げランキング: 383,797 Amazon.co.jpで詳細を見る (こちらは『平成20年5月30日 第21版』。初版は昭和32年だ) フランス語やラテン語の学習によって会社員が得られるメリットは一般化できないが、わたしの場合、読んでいる本にフランス語やラテン語の引用がなされることもなくはないので読めるとそれなりに役に立つ。目標はあくまで「読める」レベル。 新しい言葉を学びはじめると、最初の覚えやすくて簡単なところをやっているときが一番楽しい。よって、フランス語はいまが一番楽しい気がする。と同時に複数の外国語を平行して勉強するのは学習効果が高いのでは、と思った。もちろん、フランス語の先祖にはラテン語があって、英語の先祖には古フラ

井筒俊彦全集(第1巻)『アラビア哲学 1935年-1948年』

アラビア哲学 一九三五年 ― 一九四八年 (井筒俊彦全集 第一巻) posted with amazlet at 14.07.08 井筒 俊彦 木下 雄介 慶應義塾大学出版会 売り上げランキング: 290,203 Amazon.co.jpで詳細を見る 今年(2014年)は井筒俊彦の生誕100年にあたり、没後20年だった昨年から全集の刊行がはじまったり、特集のムックが出たりしている。いよいよ、井筒再評価か……(なにしろ、自分の勤め先の上司が件のムックを買ったぐらいである)というタイミングでわたしもようやく積んで置いた全集の1巻目に手をつけた次第(『井筒全集、買わねば〜』と3巻まで一挙に注文していたんだが、箱から出してすらいなかった)。井筒の最晩年に中央公論社から全11巻の著作集がでているが、今回の全集は英文著作と翻訳をのぞくすべての著作を年代順に収録したコンプリート・エディションとも言えよう。そんなことも読みはじめてから知ったのだが……。 第1巻は1935年〜1948年の著作を収録(他の巻と重複する著作もある関係で、一部のみ収録しているものもある)。戦前の20歳のときのデビュー作が詩だったことにも驚いたが、戦時中の井筒の研究が社会的に求められていたことを示す記述も「歴史」を感じさせるものだ。1943年に書かれたアラビア語に関する文章にはこうある。「既に我が国と密接なる関係に入ったインドネシアには6000万の回教徒が、マライ半島には200万、タイには49万、仏印には30万、満州には50万、支那には1500万の教徒が居ることを考えなければならぬ。此れ等の人々と深く接触し、或は之を正しく指導するためには、回教なるものを根底から理解しなければならないのである」。現代に井筒のような天才が生きていたら、天才過ぎて「実用的な人材」とは見なされないかもしれない。しかし、こういう天才が国益に関与する者として生きていた時代があったことを物語る貴重な記述のように思った。 とはいえ、イスラーム教徒たちとコンタクトし、指導するための手がかりのように綴られたハズの著作が、果たして役に立っていたのかどうかは不明である。難解な文章を書いていたわけではないけれども(井筒の文章はいつもわかりやすい)、スーフィズムが云々、アッバース朝の翻訳文化が云々、と

学生時代に一冊も読めなかった洋書を会社員の俺がストレスなく読めるようになるまでの話

当ブログの過去ログを参照したところによれば、割とマジメに英語の勉強をはじめてから丸3年ぐらい経っていたし、インターネットの皆さんは英語の勉強法が好きらしいのでブログ記事にこれまで勉強してきたことをまとめておく。まずは、英語の勉強をはじめたときのわたしが立てた目標だけれど、 英語の原書(主に邦訳が高価、あるいは邦訳がない研究書)が読めるようになること できれば、英会話もできるようになりたい ……とこんな感じであった。なお、勉強の方針として「教材は『これ!』と決めたヤツをやりつくすまでやる」というポリシーを立てている。目標のうち、1つ目はほぼ達成できている、と言って良い(2つ目の目標は英語で人とコミュニケーションをとる機会が年に3回ぐらいしかないため、なかなか上達しない)。よって、以下の記述は 「英語の研究書を読めるようになりたいが、なにから手をつけて良いかわからない(また、勉強にお金をかけられない)」 という大学生などの参考になるかもしれない。 単語の勉強 英文を読もうとして「単語がわからないのでイチイチ辞書をひかなくてはならず、そのストレスで挫折する」というケースは多い(受験英語も怪しいのに、いきなり難しい原書に挑戦して死亡する、など)。よって、ある程度、基礎として単語は固めておいたほうが良い。教材はなんでも良いと思う。自分は学生時代にいきなり意識が高くなって「TOEICの勉強をするぞ!」と意気込んで買って、結局一切使わなかった『DUO 3.0』を使った。 DUO 3.0 posted with amazlet at 14.07.07 鈴木 陽一 アイシーピー 売り上げランキング: 50 Amazon.co.jpで詳細を見る めちゃくちゃロングセラーな教材だけあって使い勝手は悪くない。掲載されている例文は560個あるが毎日20個ぐらい読んでいくとおよそ4週間で一周できる。これを単語カードなどを作りながら4周ぐらいやった。よくこの教材を使うときは「CDを使え!」という話を読むけれど、別に必須ではないと思う。自分の場合、CDを使うよりも目で読んで頭のなかで音を流すほうが効率が良かったので(一応、CDも買っていた)、ほとんど使わなかった。 発音のトレーニング 英語を読む力をつけるのに

Alice Goffman 『On The Run: Fugitive Life in an American City』

On the Run: Fugitive Life in an American City (Fieldwork Encounters and Discoveries) posted with amazlet at 14.07.07 Alice Goffman Univ of Chicago Pr (T) 売り上げランキング: 55,676 Amazon.co.jpで詳細を見る ちょっと前から英語の勉強と情報収集用に海外の新聞社サイトをRSSで購読していて、本書の存在を知る。著者のアリス・ゴッフマンは「もしかして……」と思ったら、かのアーヴィング・ゴッフマンの娘だそう(1981年生まれの33歳。 ウィスコンシン大学のサイトには近影があるが、父親に結構似てる )。タイトルを(Pink Floydの同タイトルの曲にならって)訳したら『走り回って: アメリカ都市における逃亡生活』とかになるだろうか。有名な社会学者の娘のデビュー作で、しかも父親の業績とのつながりを感じさせる都市のエスノグラフィーともなれば、話題にもなるのか発売時には複数のネット記事でとりあげられているのを読んだ。 Deep Cover: Alice Goffman’s ‘On the Run’ こちらは最近NYTimes.comに出ていた書評。かなり好意的に紹介されているけれども、実際読んだらかなり面白い本だった。内容は、筆者がペンシルヴァニア大学の学部生時代にキャンパスの近くにあった黒人貧困層が多く住む地区、6番通り(6th Street)で家庭教師をしていたことからはじまる参与観察の記録。そこにはドラッグの密売や窃盗などを繰り返す黒人の若者を中心に、6番通りで生活する人々がどんな風に生活しているかが生き生きと描かれている。11年にも及ぶフィールドワークは、なかなかの体当たり取材とも言えて、6番通りに移り住み、インフォーマントとべったり生活を共にしたそう。喋り方は黒人の若者のクセがうつり、それまでの生活スタイル(健康に気を使って野菜をたくさん食べたり……とか、まあ中流層みたいな感じの)は希薄化、さらには警察に逮捕までされている。 警察の捜査網から逃れるための若者たちのテクニックや、逆に警察の捜査テクニックなどにページを多く割いているけれど、追われ

「ブラジル音楽 = ボサノヴァ」から一歩進みたい人のためのアルバム・リスト

FIFAワールドカップブラジル大会にあわせて、ブラジル音楽のカタログを持っているレコード会社が1000円(+消費税)で過去の大名盤を再発しまくっている。たまには人の役に立つブログ記事も書こうと思って、今回はユニバーサルの「ブラジル1000」企画から「『ブラジル音楽 = ボサノヴァ』から一歩進みたい人のためのアルバム・リスト」を作成してみよう。なお、ボサノヴァから一歩進むために、当然のごとく、ボサノヴァ(= 乱暴に『クルーナー唱法で歌われるアコースティックなサンバ』と定義します)はリストにいれません。 プレヴィザォン・ド・テンポ posted with amazlet at 14.07.06 マルコス・ヴァーリ ユニバーサル ミュージック (2014-06-11) 売り上げランキング: 1,824 Amazon.co.jpで詳細を見る まずは、 マルコス・ヴァリの『Previsão de Tempo』 を。ボサノヴァ第2世代として世に出たミュージシャンの1973年の作品。本作は後にブラジリアン・フュージョン・バンドとしてヒットを飛ばすAzymuthがバック・バンドを努めており、ブラジル音楽とアメリカ音楽の見事なクロスオーヴァーを堪能できる。同年にヴァリがプロデュースしたジョアン・ドナートのアルバム『Quem é quem』とともに、エレピを大フィーチャーしたメロウなポップ・アルバムとして金字塔的な一枚。 アフリカ・ブラジル posted with amazlet at 14.07.06 ジョルジ・ベン ユニバーサル ミュージック (2014-06-11) 売り上げランキング: 4,148 Amazon.co.jpで詳細を見る ジョルジ・ベン (現在はジョルジ・ベンジョール名義。今月来日予定)も元々はボサノヴァ歌手としてデビューしたミュージシャン。セルジオ・メンデスのカヴァーが日本では有名な「Mas Que Nada」を作曲したのもこの人だ。その後はサンバとロック、ファンクを融合した「サンバ・ホッキ(samba rock)」というジャンルの立役者となる。1976年の 『África Brasil』 はそのサンバ・ホッキの大名盤。もうタイトルから雰囲気がにじみ出てしまっているが

新しいスピーカーとプレイヤーを買ったんだ日記

当ブログを長らく読んでいただいている方々におかれましては、拙宅のオーディオ・システムのスピーカーが塩ビ管で自作したものであることはご存知かと思う( 関連エントリー 。このエントリーからその後、収音材を貼ったり、仮想グラウンドを取り付けたり色々手をいれている)。これは4年ぐらい使用していて、音も気に入っていたんだけれども、見た目のジャンク感が不評であった。また、お掃除ロボットルンバ導入後、によって度々破壊される、という悲しい状態に置かれていた。それで、今回、夏のボーナスで新しいスピーカーを買ったのである。 ONKYO INTEC205 スピーカーシステム (2台1組) 木目 D-212EX posted with amazlet at 14.07.06 オンキヨー (2009-02-14) 売り上げランキング: 3,359 Amazon.co.jpで詳細を見る ONKYO ネットワークCDレシーバー CR-N755 ブラック posted with amazlet at 14.07.06 オンキヨー 売り上げランキング: 6,475 Amazon.co.jpで詳細を見る 「次買うなら、JBLとかのフロア型のヤツが良いなあ〜……」と夢見ていたんだけれど、現実的に置く場所ないよね、あと、そんなデカい音で聴かないよね……というわけで、結局購入したのは、ONKYOのD-212EXというブックシェルフ型の機種。あわせて、上京のときに買ってもらったミニコンポ(MDもCDも故障で聴けず、PCから出力した光デジタル信号を再生する機器と化していた)も買い替えた。   (設置した様子。スペースの都合で、プレイヤーが左のスピーカーの前に来ているのはいずれなんとかしたい)結果、すごく気に入って聴いている。自作の塩ビスピーカーが放つ、コンサートホールで生楽器が鳴っているような低音も良かったけれど、こういう形でスタジオ・モニターみたいな聴き方ができるのは、改めてブックシェルフ型の良いところだなあ、とは思う。とにかく解像度と分離が気持ち良いんだけれども、中低音もしっかり鳴る。山下達郎の「SPARKLE」とか聴くと感激するぐらいにハマるので最高。 購入したプレイヤーはオプションのWiFi受信機をつけると