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5月, 2014の投稿を表示しています

モルゴーア・クァルテット / 原子心母の危機 Atom Heart Mother is on the edge

原子心母の危機 Atom Heart Mother is on the edge posted with amazlet at 14.05.26 モルゴーア・クァルテット 日本コロムビア (2014-05-21) 売り上げランキング: 5 Amazon.co.jpで詳細を見る 日本のトップ・オーケストラのトップ奏者たちによる弦楽四重奏団、モルゴーア・クァルテットの新譜を聴く。当初ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を演奏するために結成されたこのグループだが、いまでは「プログレの名曲を弦楽四重奏で演奏するグループ」のほうが通りが良いのかもしれない。EMI時代には 『ディストラクション ロック・ミーツ・ストリングス』 、コロムビアに入ってからは 『21世紀の精神正常者たち』 、そしてこの『原子心母の危機』でプログレ・カヴァー・アルバムは3枚目(ジャケットが最高だが、レーベル面は『危機』のジャケットをモチーフにしたデザイン。凝っている)。今回はPink Floyd、King Crimson、Yes、Genesis、EL&P(キース・エマーソンのソロ楽曲も)といわゆる「四天王」を取り上げている。 編曲も演奏も素晴らしく、非常に楽しいアルバムに仕上がっているのだが、こうして弦楽四重奏というフォーマットに楽曲が置き換えられると、西洋の伝統的な芸術音楽の形式と、プログレッシヴ・ロックの形式との違いが気になる楽曲もでてくる。EL&PとかYesとか、クラシックの書法がベースとしてあったり、スタジオのなかで長い楽曲をガチガチに構築していったタイプのバンドの楽曲は、違和感がなくハマる。けれどもKing Crimsonの「Red」みたいに、リフの繰り返しがしつこい楽曲はどうしても単調に聴こえてしまった。King Crimsonに関して「バルトークの影響が……云々」と語られることがあるけれど、モルゴーアの演奏によって、バルトークみたいに難しいことをこのバンドは一切やっていないのが分かる。King Crimsonにとってのプログレッシヴ・ロックとは「気難しい顔で演奏するハードロック」だったのではないか、とさえ思えるのだった。

近藤淳也 『「へんな会社」のつくり方』

「へんな会社」のつくり方 (NT2X) posted with amazlet at 14.05.22 近藤 淳也 翔泳社 売り上げランキング: 191,784 Amazon.co.jpで詳細を見る jkondoこと、株式会社はてなの社長、近藤淳也の本を読む。新刊でもなんでもなく、2005年にWebで連載していた記事をまとめたものなので、もうかなり古い本になっていると思うのだけれども面白く読んだ。掲載された写真には、すでにはてなを退社されている著名なエンジニアの姿を確認できたり、はてなブックマークがヒットしてシリコンバレーにいく直前の筆者のノリノリ感がなかなか感慨深い。はてなのサービス利用者として特段の思入れがあるわけではないけれど(はてなユーザーの一部にはそういう人がいる/いたじゃないですか)、個人的には今読むべき価値を感じる本だったと思う。 とくに筆者が思い描く「自由で素敵なインターネット」像は面白い。本書の内容、あるいは筆者の人格が語られるにあたって何度も指摘されているだろうけれど、この人の性善説ベースの考えというか、サービスの利用に厳しいルールを設けないことによって問題があったとしても「悪いものはある程度淘汰されて、最適化されるんじゃないの」という世界観が、「自由で素敵なインターネット」像を何倍もキラキラさせて見せてくれるし、その素敵感は未だに色褪せていない。 情報はどんどんオープンになったほうが良い、だとか、つながりが見えた方が良い、だとか、その後のインターネットは筆者が思い描いていた方向にある程度進んだ、と思われる。しかし、その行き着いた先に息苦しさがあったり、地獄を日々見せられてもいる。オープンにした結果、Twitterで大炎上(と言う名の『私刑』)だとか「自由で素敵なインターネット」からほど遠い現実が散見されたりして、どうしてこうなった、と思わなくもないし、所得や生活レベルの面で格差の拡大が、と言われる一方で、インターネットにも階層ができちゃってるのでは、とも思う(素敵インターネットユーザーと地獄インターネットユーザーみたいに。両者は敷居がなく生活して見えるのだけれども)。 ところで今これを書きながらインターネット(のサーヴィス)で生活が便利になったかを考えていたんだけれども、ちょっとは便利にな

村上春樹 『羊をめぐる冒険』

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫) posted with amazlet at 14.05.19 村上 春樹 講談社 売り上げランキング: 6,992 Amazon.co.jpで詳細を見る 羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫) posted with amazlet at 14.05.19 村上 春樹 講談社 売り上げランキング: 9,929 Amazon.co.jpで詳細を見る ちょっと前から『羊をめぐる冒険』を読みなおそうと繰り返し思っていた。この小説を初めて読んだのは20歳ぐらいだったハズで、その記憶が確かならば、およそ10年ぶりに通して再読したことになる。ちょうど小説の主人公である「僕」も小説内で30歳になろうとしていて、わたしも来年の3月で30歳になろうとしていた。年齢的には「僕」に追いついてしまったわけだが、彼が素敵な耳をもつガールフレンドに「良いバーはうまいオムレツとサンドウィッチを出すものなんだ」と語れるのに対して、わたしはまだそんなことをサラリと言えるところまで達していない。小説内の時間は、1978年で、当時のアラサーとは今のアラサーよりも成熟していたのか、もっと大人文化があったのか、という感想を思わず妻に伝えたら「そういう時代だったんでしょ。今みたいにチェーンの居酒屋なんかなかっただろうし。飲みにいくといったらバーだったんじゃないの?」となんとも的を射る答えをもらった。ほかにもソルティードッグの名前がパッとでてこない女性がでてきたり(今ではコンビニでも瓶入りのソルティードッグが買える)、飛行機のなかで煙草が吸えたりする(今でもたまに座席に灰皿がついた飛行機に乗ることがあるけれど)1978年の描写は、なかなか驚くべきものがある。再読して気づいたことだけれども。 しかし、舞台が昔だろうが、村上春樹の小説の筋というのはこの頃からずーっと変わってなくて『羊をめぐる 冒険 』なハズなのに、そんなに主人公は冒険していない。そして、やはり主人公の敵は、なんらかのシステム的なものである。言ってしまえば、村上春樹の小説は、ワタミの社長みたいな象徴的悪と闘っている感じがある。ただし、敵のスパイが気づいたら後ろに立っていて、首の後ろあたりを手刀で殴られ、気絶させられる、と

小田朋美 / シャーマン狩り: Go Gunning For Shaman

シャーマン狩り posted with amazlet at 14.05.19 小田朋美 AIRPLANE LABEL (2013-12-04) 売り上げランキング: 56,945 Amazon.co.jpで詳細を見る 先日、菊地成孔主宰のDCPRGへの正式加入が発表された女性ミュージシャン、小田朋美のデビュー・アルバムを聴く(アートワークや選曲などをプロデュースしたことで菊地も製作陣に名を連ねている)。なんでも藝大作曲科出身の才女、ということなので坂本龍一や、加古隆らの後輩ということになってしまうのだが、「藝大ブランド」があるのだとしたらそれに相応しい作品であると思った。ジャケットとアルバムタイトルからは極彩色の、荒々しい音を想像してしまうのだけれども、小田の歌声とともにあるのはピアノ五重奏、ピアノ五重奏+ドラム、あるいはピアノとドラムのデュオ、というシンプルな楽器編成で、とてもクラシカルな音色で構成されている。もちろんシンプルな楽器編成がモノトナスな音風景に直接的に結びつくわけではなく、むしろクラシカルな音の中でも音色の多彩さがとても良い。どのジャンルで囲うと一番しっくりくるか考えると、クロスオーヴァーなポップス、という感じなのかも。 彼女の歌声もいろんな表情を持っていて、曲ごとに驚かされてしまった。冒頭のPerfume(!)のカヴァーを聴いたときは「なんだ、矢野顕子/原田郁子的な弾き語り的な人か」と一瞬思ったけれど、ピアノとドラムのインタープレイにぶっ飛ばされ、Spank Happy(!)のカヴァーを聴いたときには本家に肉薄し(そして上手い)コケットリー的な歌声に痺れ、最後に収録されている寺山修司の詩を用いた楽曲では、裸足でステージに立つ系の女性歌手のごとき凄みを感じさせる。1曲だけ、インストの弦楽四重奏曲も収録されていて「(学校の課題作品風な感じではあるのだが)初期のコルンゴルトの弦楽四重奏の緩徐楽章を久石譲がわかりやすくした!(まったくポジティヴに思えない表現で申し訳ないけれども)」みたいな楽曲だったのもまたグッときた。 (ところでカヴァー曲と自作以外での歌詞が、宮沢賢治、谷川俊太郎、寺山修司からとられているのは、なんというか、伊賀大介的なセンスだとは思いませんか。悪いとは言ってない)

Temples / Sun Structures

Sun Structures posted with amazlet at 14.05.18 Temples Hostess Entertainment (2014-02-11) 売り上げランキング: 1,640 Amazon.co.jpで詳細を見る ノエル・ギャラガーやジョニー・マーが大絶賛しているというイギリスの新人バンド、Templesのファースト・アルバムを聴く。近年のバンドで「サイケ・ロック・バンド」を名乗り、正面切って活動しているバンドも珍しいが『Rubber Soul』期のThe Beatlesや、The Zombies、あるいはThe Animals、さらに初期のSoft Machineまで彷彿とさせる純正UKサイケ・ロック・サウンドが素晴らしかった。聴いていて「ホントに21世紀のバンドなのか……」と疑わしく思えてくるほどである。しかし、あえてサイケを回顧的にやっております……という感じではない。ボヤーっとした音像の古臭い感じの向こうからギンギンに本気な感じが伝わってくる。あと最近で一番、メロトロンの音を聴きました。

Neil A. Manson(編) 『God and Design: The Teleological Argument and Modern Science』

God and Design: The Teleological Argument and Modern Science posted with amazlet at 14.05.16 Routledge 売り上げランキング: 1,418,757 Amazon.co.jpで詳細を見る インテレクチュアル・デザイン(ID)論に関する論文集を読む。このブログでは定期的に初期近代におけるデザイン論に言及した本を取り上げてきているが(例えば、 メランヒトン や イエズス会の布教戦略 では、学問が世界のデザイナーである神を理解するために、神によって作られた宇宙や自然を理解する方法論として説かれていた)、本書は現代科学とID論である。いろんな論者が、量子物理学だったり、生物学だったりを取り上げながら、宇宙は知的なデザイナーによって作られたのか/違うのかを真面目に論じているのだけれども……読んでいて、正直「デザイナーがいようがいまいが、科学の営みになんか関係あるのか?」とかなりうんざりしてしまった。前述のメランヒトンやイエズス会の宣教師の時代であれば、デザイナーの存在が学問に対するモチベーションを支えていた、と言えるだろう。しかし、現代において科学が自己目的化し得るのであれば、デザイナーがいようがいまいが全然関係ないじゃん、と思う。 ID論者、マイケル・ベーエ(Michael J. Behe)やら、ウィリアム・デムスキー(William Dembski)たちが一生懸命「還元できない不可能性が!」とか「人間が存在できる宇宙ができたのはデザイナーがいなかったら考えられない! 宇宙は調整されてできあがっている!」とか言うわけです。でも、それはキリスト教的な神を知的なデザイナーと言い換えただけじゃん、とドーキンスじゃなくても突っ込みたくなるところだ。論文のなかで語られる、ウィリアム・ペイリーの「砂漠のなかに時計が落ちてたら……」みたいな説話とか、トーマス・ベイズが論理学によって神の存在証明をしようとしたとか(わたし、ベイズって最近の人かと思っていたので、そこで単純に驚いた)はイチイチ面白い。けれども、本書のなかでは一番面白いのはID論の批判者たちの主張だ(この論文集自体が、ID論万歳!な感じではない)。 例えば、多元宇宙論を想定すれば、

姉崎等(語り手)・片山龍峯(聞き書き) 『クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』

クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫) posted with amazlet at 14.05.11 姉崎 等 片山 龍峯 筑摩書房 売り上げランキング: 49,391 Amazon.co.jpで詳細を見る 私の友人に 軽井沢で熊と遭遇した……! と大騒ぎ して、 後日確認したら大型の犬だった 、というエピソードを持つ人がいるんだけれど、是非、その当事者にも読んでもらいたいタイトルの本。タイトルは「山で熊にあったらどうするか」のハウツー本みたいなのだが、主題はそれだけではない。熊の生態であったり、アイヌの信仰、山でのハンターの生活、猟犬の育て方、熊と人間との共存……など多岐にわたっていて、大変面白かった。 語り手の姉崎等さんは、アイヌのハンターで、2001年に銃を手放すまで65年以上に渡り猟銃を持って山に入り、狩りをおこなっていた(昨年90歳で亡くなっている)。生涯に60頭の熊を獲った、といってもこれが多い数字なのかどうかわからないけれど、曰く、並みのハンターが重ねられる数字ではないそうである。姉崎さんは、達人であり、伝説的なハンターだったのだ。 しかし「ひとりで山に入る」という彼のハンティング・スタイルは、集団で山に入るアイヌの伝統から外れている。屯田兵として北海道にやってきた父親と、アイヌの母親のあいだに生まれた彼は、周囲のハンターのなかに混ぜてもらえなかった。そうした差別を目の当たりにしながら、貧困から抜け出したい一心で、12歳から魚や山菜を取って生計を立ててきた。アイヌの伝統的狩猟法は、必死で周囲から盗んだものだったようだ。ひとりで山に入りはじめたのも、そうした事情によるものだ。そこで姉崎さんは、熊や鹿といった動物を観察することで、山歩きの方法や過ごし方を独自に会得していった、という。 この語りのなんと魅力的なことか……。よく超一流アスリートのインタヴューなんか読んでいると、見えている世界がスゴすぎてまったく理解できないが、とにかく面白い文章に出くわすことがあるけれど、姉崎さんの語りもそれに近いものがある。山での火の大切さであったり、食生活であったりは、都市に住む人間のライフスタイルとはまるで別世界のものだった。この語りの魅力には、その超人的な能力だけではなく、姉崎さ

Gilberto Gil / Gilbertos Samba

Gilbertos Samba Voce E Eu posted with  amazlet  at 14.05.08 Gil Gilberto Imports (2014-04-08) 売り上げランキング: 13,994 Amazon.co.jpで詳細を見る ジルベルト・ジルの最新作が、ジョアン・ジルベルトへのトリビュート的な内容だと聞いて、これは間違いないだろうな……と思っていたけれど、期待以上の出来で感激。めちゃくちゃ良い。盟友カエターノ・ヴェローゾが老いてなお妖艶さを増しているのに対して、ジルベルト・ジルの歌声は「円熟」という表現がピッタリなものとなっているのを実感した。年をとって涸れてきているわけではないのだが、ほんの少しネルソン・カヴァキーニョのような塩辛さも声のなかに含まれてきている。そのバランスがとても良い。 ジョアン絡みのクラシックを数多く収録し、そこにセルフ・カヴァーやドリヴァル・カイミの楽曲を織り込んだルーツ・サンバ的なコンセプトをまとめたベン・ジルとモレーノ・ヴェローゾのプロデュースも素晴らしかった。ここではアコースティック楽器主体のサウンドのなかに、サンプラーなどのアクセントを取り入れられて「ただただリラックスするための音楽」ではない締まった音世界が構築されている。演奏にはプロデューサー周辺のミュージシャンが数多く参加しているのだけれど、なかでもドメニコのドラム(パーカッション)が刻むリズムが良い塩梅。新しいMPBのサウンドを作り出してきたミュージシャンたちが、極めてオーセンティックなことをやっている、という事実には、改めてブラジルという国の音楽的土壌の豊かさを思い知らされるのだった。

今野杏南 『撮られたい』

撮られたい posted with amazlet at 14.05.07 今野杏南 ティー・オーエンタテインメント 売り上げランキング: 10,709 Amazon.co.jpで詳細を見る ちゃんとした官能小説だが、自分で書いてないだろう……!

吉木りさ 『誰かさんと誰かさんがネギ畑』

誰かさんと誰かさんがネギ畑 posted with amazlet at 14.05.07 吉木りさ 竹書房 売り上げランキング: 539,859 Amazon.co.jpで詳細を見る つらい読書だった……。

真木蔵人 『BLACK BOOK 蔵人独白』

BLACK BOOK 蔵人独白 posted with amazlet at 14.05.07 真木蔵人 コアマガジン 売り上げランキング: 24,175 Amazon.co.jpで詳細を見る 眞木蔵人の第一著作を読む。編集の上手さ & 本の作りは、 最新作(第二著作) の方が断然上。本人にインタヴュー取材をした素材を語り起こした本だと言うけれど、起こし方の滑らかさが第一著作と第二著作では全然違っていて、第一著作のほうは全然粗い。言ってみれば、こっちはネイキッドであり、第二著作はフィル・スペクターの編集が入り過ぎているのかもしれない。いや、ちょっと違うな……。第一著作がネイキッドだとするならば、第二著作は、リック・ルービンがプロデュースしたジョニー・キャッシュか……? それでも言っていることのコアな部分は全然変わっていないし、素晴らしい。もう結構古い本になっているので、言及されている時事ネタがなんだったかわからなくなっている部分もあるけれど、それでもこの爆弾投下みたいな言葉の強さは失われていないんです。まえがきも、あとがきもなく、言葉だけが残っていて、それがすごく強い。それってスゴい本じゃないですか。

やきものの事典(を携えて、益子陶器市にいったんだ日記)

ここ最近、『開運! なんでも鑑定団』の再放送を夫婦で観るのが習慣となりつつあり、中島誠之助先生のウンチクに看過されて、焼き物に興味を持ちはじめた。それでこないだのGWは、 栃木県益子市で定期開催されている陶器市 まで足を運んだのだった。このイベント、車がないとなかなか行きづらいところではあるのだけれども、日帰りバス・ツアーも組まれている。新宿からバスで片道3時間半ほど。車中で寝ていれば会場に着くのでこれは大変便利だった。 やきものの事典 posted with amazlet at 14.05.06 成美堂出版 売り上げランキング: 117,288 Amazon.co.jpで詳細を見る 道中、この本を読みながらやきものについて勉強。Amazonのレビューでも指摘されているが、専門用語にフリガナがふられていないのはちょっと減点だが、基本的な知識はこの一冊があれば学べるだろう。ただ、中島誠之助先生のウンチクを真面目に聞いていれば、陶磁器の勉強はしなくても良いんじゃないか、とも思った。それぐらい『鑑定団』は勉強になる番組なのだな……。 会場では陶磁器だけじゃなくて地元の農産物や商品、地ビールなどさまざまな出店がでている。なかでも 「益子手づくりハム とん太ファミリー」 の薫製は絶品だった。 ベーコン、ささみの薫製、それから変わり種で「とうふスモーク(クセのないチーズの薫製のようで、絶妙な塩気とチップの薫りが素晴らしく酒のつまみに最高である)」を買って帰った。その場で食べられる、ベーコンやソーセージやハムをホッドドッグのパンに挟んだ「いろいろドッグ」も美味しかった。 陶器市に出店している作家さんは、全員が益子で製作をおこなっている方々ではなく、全国からいろんな人が集まっている。なので益子焼だけが売っているわけではないし、見ていて飽きない。自分も益子の作家さん以外のものも買っていた。 こちらは茨城の高萩で製作をおこなっている 沼田智也さん のぐい呑み。手に取った瞬間、吸い付くような感触があり、迷わず購入した。こういう渋い作品だけじゃなくて、可愛い絵柄のお皿も並んでいた。 こちらは愛知の瀬戸で制作している 穴山大輔さん の片口。これもなかなか渋いが、落ちついた緑釉の発色や、大きさがとても気に入った。ちなみ

雲田はるこ 『いとしの猫っ毛』(3)

いとしの猫っ毛3 (シトロンコミックス) posted with amazlet at 14.05.06 雲田 はるこ リブレ出版 (2014-04-23) Amazon.co.jpで詳細を見る 現状、BLは雲田はるこしか読まない(ブラック・ミュージックはプリンスしか聴かない、みたいな感じだが……)んだけれど、新刊も大変面白く読んだ。純愛はもはやBLのなかでしか描けないし、惚れた腫れたの物語が読みたかったらBLを読むしかないのかも、とか、そういうことを考えてしまう。

長谷川修一 『聖書考古学: 遺跡が語る史実』

聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書) posted with amazlet at 14.05.06 長谷川 修一 中央公論新社 売り上げランキング: 34,157 Amazon.co.jpで詳細を見る 旧約聖書を頭から読んでいるのだが、なにぶん寝る前にパラパラとめくったり、気が向いたときにしか開いたりしないので、もう読み始めてから4年ぐらい経っている(それでも、ようやく最近になって『ダニエル書』にはいった)。この読み進まなさの理由のひとつには、単純に分量が多いことだけじゃなく「このテキストは一体なにを意味しているのか?」と疑問が浮かぶことが多すぎる、というのもある。世界の創造だとか、海がガバーッと開くだとか、巨人を石で打ち殺すとか、有名な箇所に出くわしてテンションがあがったりするぐらいで、正直、旧約聖書ってなにが書いてあるかわからない部分が大半じゃないですか。なにか読む手がかりがないと、読むモチベーションがあがらないですよね。 ……という同じ悩みを抱えているアナタにも、この『聖書考古学: 遺跡が語る史実』はオススメかも。聖書にまつわる学問にもさまざまなものがあれど、この本は考古学者がおこなっている発掘調査などからわかる最新の知見をもとに、聖書に書いてある時代や出来事、場所の同定をおこなう「聖書考古学」という学問を紹介してくれる。コンパクトだし、旧約聖書がどのような目的で、どのように書かれた(と考えられている)かや、聖書に書かれた(であろう)時代の情勢が分かって大変面白かった。 「聖書考古学」はその名のとおり「聖書学」と「考古学」との学際性をもっている。考古学者がどういう調査をしているのかも学べる。聖書にまつわる考古的調査といえば今も中東での発掘調査が盛んにおこなわれている。中東での発掘というとすぐさま『オーメン』とか『エクソシスト』とかに登場するシーンを思い浮かべてしまうけれど、本書を読むとこうした映画のシーンでどんな発掘をおこなっていたかもわかってきます。