Steven Shapin & Simon Schaffer 『Leviathan and the Air-Pump: Hobbes, Boyle, and the Experimental Life』

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Leviathan and the Air-Pump: Hobbes, Boyle, and the Experimental Life
Steven Shapin Simon Schaffer
Princeton Univ Pr
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『リヴァイアサンと空気ポンプ(Leviathan and the Air-Pump: Hobbes, Boyle, and the Experimental Life)』を読む。なんとも言えない不思議なタイトルの本だが、1985年にスティーヴン・シェイピンとサイモン・シャッファーによって発表された科学史の本で、先日とりあげた科学哲学の入門書でも大きくページを割いて言及されている。ざっくりと内容を紹介すると、1660年ごろにイギリスでおきたホッブズとボイルによる「真空論争」が詳細に検討したもの。

ボイルといえば「近代化学の祖」として評価されている人物。一方のホッブズは本書のタイトルにもある『リヴァイアサン』を書き上げた「政治哲学者」として知られている。前者が科学史の本で取り上げられるのはすんなりと納得がいくけれど、ホッブズが自然哲学にも強い関心をもっていたことはホッブズ学者にもあまり注目されていない事実だ。そういうわけでボイルとホッブズのあいだの対立は「忘れられた論争」だったのだろう。しかし、本書はそこに哲学の領域から近代科学がテイクオフする瞬間を捉えている。

近代科学に通じる手続きが、ボイルらの実験哲学には含まれていた。それは理論一本ではなく、実験によって得た経験的なデータを元に記述するスタイルだ。多くの人が実験結果の「目撃者」になることで、その正当性は保証される。そのために、実験に関する記述は読み手が仮想的に実験を目撃することを目指して詳細におこなわれたという。

これに対して、ホッブズは実験データをいくつ集めても自然の理解はできない、という立場からボイルらの実験哲学を批判していた。ホッブズ曰く、自然は神によって作られたものであり、その法則性を人間が理解するのは不可能である、という。ゆえにデータを集めても無駄である……とボイルとホッブズのあいだには「真空の有無」だけでなく、根本的な自然観から違っていたのだ。

また、当時のイギリスは清教徒革命がおこった直後、1660年には王政復古があり、政治的にもかなり慌ただしい状況だった。ボイルとホッブズだけでなく、当時の神学者・哲学者たちも政変の影響は大きく受けていた。そんななかボイルら実験哲学者たちがどのように自分たちの活動を危険思想視されないよう考慮したかについての記述もとても面白かった。

わたしが読んだのは2011年にでた新しい版で、このヴァージョンにつけられた序文に関してはすでに坂本邦暢さんが詳しくとりあげている。科学・哲学・宗教・政治などさまざまな分野について本書は当初、科学史業界では「なんだかよくわからない本」だと思われて、評価されるようになるまで長い時間を要したんだって。

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