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2月, 2014の投稿を表示しています

Keziah Jones / Captain Rugged

Captain Rugged posted with amazlet at 14.02.22 Keziah Jones Imports (2013-11-19) 売り上げランキング: 16,281 Amazon.co.jpで詳細を見る ブルースとファンクの融合「ブルーファンク」の代名詞、キザイア・ジョーンズの新譜を聴く。この人はナイジェリア出身のギタリスト・歌手で、同じナイジェリアの「黒い大統領」フェラ・クティとも親交があったそうである。ギター奏法に特徴があり、スラップでギターを弾く、という一芸で、タッピングで有名なスタンリー・ジョーダン的にウケた人なんだけれども、本作はギターがテクニカルである、というポイントよりも、どっちかというとそこから生み出されるビートが大変モダンな感じがして良い。そして、なんだか猥雑である。この猥雑さは、フェラ・クティというよりかは、フェミ・クティがモータウンから出したアルバムに近いものを感じるし、ジョニー・ギター・ワトソンのような感じでもある。 キザイア・ジョーンズがモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出ているときの映像(腹筋の割れ方がスゴい)。あと、聴きながらアフロビートってリズムよりも、言葉の訛りで「アフロビートっぽいな!」と思う部分が大きい気もしてくる。

中島ノブユキ / clair-obscur

clair-obscur posted with amazlet at 14.02.22 中島ノブユキ BounDEE by SSNW (2014-02-19) 売り上げランキング: 2,306 Amazon.co.jpで詳細を見る わたしが中島ノブユキの名前を知るキッカケは、菊地成孔のアルバムに編曲者・作曲者として参加していたことで、とにかくしっかりとしたクラシカルな書法を学んだ人なんだな、という風に思っていた。最近は、大河ドラマの音楽をやったり、ジェーン・バーキンのツアーに参加したりと露出も増えていて、中島ノブユキは近年最も注目されている(ゴーストライターがいない)職業作曲家と言えるだろう。『clair-obscur』は彼の2枚目のピアノ・ソロ・アルバムとなる。 もっぱら中島ノブユキの仕事はストリングスのアレンジなどに触れているだけだったので、ピアノ曲はどういうものがあるのだろうか、と気になった。今回のアルバムには(陳腐な物言いになるけれど)「ECM的な深遠さ」を感じさせる楽曲が収録されている(なんかジャケットもそんな感じだ……)。「ソニア・ブラガ事件」(菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールに提供した楽曲)のような高度な対位法を用いた、偽バルトーク的な作品を書く人のイメージからは遠く離れている。 ピアノも作曲者自身が演奏しているが、高度な超絶技巧が要求されるものではない。これは音そのものよりも、放たれた音が消えゆくまでのレゾナンスに耳をとぎすませたくなる音楽である、と思う。ちょうどそれがアルヴォ・ペルトや、パウル・ギーガーの音楽を想起させ「ECM的な深遠さ」という表現を思いついてしまうわけだが、楽曲そのものが彼らに似ている、というわけではない。逆に「○○風」とつけられるようなぴったりのラベルが見当たらない気がする。唯一「aria」という楽曲は、晩年のショスタコーヴィチが書きそうな言葉の少ない美しさがある、と思ったけれど。

越澤明 『東京都市計画物語』

東京都市計画物語 (ちくま学芸文庫) posted with amazlet at 14.02.18 越沢 明 筑摩書房 売り上げランキング: 71,041 Amazon.co.jpで詳細を見る 「東京の街並みは無計画に開発された結果できあがったものだ」という話はよく耳にする。本書はこうした意見に異を唱え、東京の都市計画史を描いている。東京にも都市計画はちゃんとあった。しかし、それが計画通りに進まず、いくつもの挫折を経験した結果がいまの東京の姿である、と著者は主張する。関東大震災後の帝都復興計画と戦災復興計画という巨大な「ほとんど実現されなかった」プロジェクトが実現していたら……という「IF」の理想像を、わずかに現実化したプロジェクトの一部などから解き明かしていく筋道はとても面白い。 そこでは大風呂敷を広げる政治家として語られてきた東京市長、後藤新平の再評価がおこなわれ、実際に行政や都市計画に関わっていた人々の生の声も収録されている。また、学生時代に住んでいた場所の近くにあった、ときわ台がアーバンデザインの計画型住宅地として高く評価されていることや、戦後から未だに完成していない道路計画の存在など身近な驚きもあった。20年以上前に出た本なので、ちょっと情報が古くなっている部分もあるけれど、今だからこそ読む価値がでてきている本でもある。日本の都市開発は、復興やイベントがなければ正当化されてこなかった、という。そして、今、我々の社会は地震からの復興と東京オリンピックというイベントという正当化の理由に直面しているのだ。 著者が下した東京の都市開発への評価は当然ながら低い。チャンスがありながら社会の無理解によって失敗した東京の都市計画が、ジョルジュ・オスマンによるパリ改造のように成功していたらどれだけ素晴らしい街になっていただろうか、という嘆きが本書には通底している。さらに隅田公園や明治神宮内外苑連絡道路といった現実化した素晴らしい遺産もまたその後の開発によって食い潰され、木賃ベルト地帯のような危険で治安悪化が懸念される負の遺産が残り続けているのが問題だ、と著者は言う。 では、どんな都市を著者は理想としているのか。ひとつ著者が外苑のオープンスペース実現に夢見た理想像を紹介しよう。「外苑のオープンスペースとは、芝生

ハインリッヒ・シッパーゲス 『中世の医学: 治療と養生の文化史』

中世の医学―治療と養生の文化史 posted with amazlet at 14.02.14 ハインリッヒ シッパーゲス 人文書院 売り上げランキング: 197,376 Amazon.co.jpで詳細を見る ドイツの医学史家、ハインリッヒ・シッパーゲス(1918 - 2003)の『中世の医学』を読む。「中世」という歴史区分は1000年ぐらいの非常に広い範囲に渡っているため、その通史を想像していると裏切られてしまうと思う。著者の専門はヒルデガルト・フォン・ビンゲンとアラビア医学だったそうで、本書も基本的にはヒルデガルト・フォン・ビンゲンというポイントを持ちながら、中世盛期・後期の医学的なテーマについてエッセイ的に書かれたものとなっている。作りとしては ホイジンガの『中世の秋』 に近いが、各テーマがもっと具体的に絞ってあるので読みやすい本だった。下のような楽しげな図版も多い。 16世紀の木版画家、Hans Wechtlinによる開頭術の図。 近代以前の医学は、これまで アヴィセンナの入門書 だとか、 パラケルススについての研究書 だとかを紹介してきた(もちろん、 フィチーノ もこのトピックには関係している)。彼らが示した占星医学・魔術的医学のバックボーンには、人体というミクロコスモスと、天体というマクロコスモスの万物照応の思想があった。これに対して、シッパーゲスは本書のなかで「中世の文献には魔術的、巫術的、悪魔的なものごとの記述が如何に少ないかと言うことは注目すべきである」と書いている。 この一言がわたしにとってはとてもためになった。「中世の医学」と聞くと、巨大な鍋でグツグツとなにかを煮込んで薬を作っている、的なイメージを抱きがちである。けれども、そのイメージはむしろ、中世の終わり頃にアラビアから流入した学問の反映である、という整理がうまい具合にできたというか。人体と宇宙の調和の思想が先にあり、その調和(不調和)の印を見極める術として、占星術であったり魔術があった、ということなのか。そもそも「医学」がどのようにひとつの学問として成立していったのか、も含めて非常に勉強になった。 読んでいてとにかく楽しいのは第4章「疾病のパノラマ」だろう。ここでは癩病、黒死病といった病気の患者がどのように(治療的な、あるいは

そういえばツェッペリンばかり聴いていたのだった

Led Zeppelin II posted with amazlet at 14.02.14 Led Zeppelin Atlantic / Wea (1994-07-04) 売り上げランキング: 1,372 Amazon.co.jpで詳細を見る Led Zeppelin III posted with amazlet at 14.02.14 Led Zeppelin Atlantic / Wea (1994-08-18) 売り上げランキング: 2,935 Amazon.co.jpで詳細を見る Houses of the Holy posted with amazlet at 14.02.14 Led Zeppelin Atlantic / Wea (1994-07-21) 売り上げランキング: 3,021 Amazon.co.jpで詳細を見る Presence posted with amazlet at 14.02.14 Led Zeppelin Atlantic / Wea (1994-08-18) 売り上げランキング: 3,361 Amazon.co.jpで詳細を見る 去年の暮れぐらいに「Led Zeppelinが聴きたいな〜」という気分に突如として襲われ、持ってなかったり、昔MDに録音して聴いてたりしたアルバムを買って猛烈に聴きまくっていたのだった。以前友達と飲んでいたときに「紺野さん、Led Zeppelin好きなんですか!? 意外すぎる」と驚かれた記憶があるが、ずっと「普通に好きですよ」という感じのスタンスでおり、今はそれこそハードロックに出会い立ての中学生ぐらいの勢いで聴きまくっていたおかげで「いや、めちゃくちゃ好きですよ」と胸を張って言いたい。 「いや、すごいですね、Led Zeppelinは」とまるで阿呆のような感想しかでてこないのだが、こんなに創造的なバンドもないですよね。とくに『Houses of the Holy』、『Physical Graffiti』での音楽性の拡大、からの『Presence』でドラム、ベース、ギター、ヴォーカルの音だけで非常に締まった

Jon Hopkins / Immunity

Immunity posted with amazlet at 14.02.13 Jon Hopkins Domino (2013-06-04) 売り上げランキング: 21,129 Amazon.co.jpで詳細を見る こないだ雑誌を読んでいたら「ブライアン・イーノの愛弟子の新譜」とジョン・ホプキンスの『Immunity』が紹介されていた(アルバム自体は昨年でていたようだが、日本盤はこれからでる模様)。クラシックの世界なら「愛弟子」という表現もしっくりくるのだが、ポップ・ミュージックの世界でこの表現はあんまり馴染みがない。しかもイーノといえば「non-musician」の代表だから余計である。どんなもんだろうか、と思って聴いたみたのだがなんのことはない「今様EDM」という感じであった。調べたらColdplayのアルバムにイーノと一緒にプロデュースで参加したことがある、というのが「愛弟子」の表現につながっているようなのだが、これ完全にダニエル・ラノワ的な位置付けなのでは、と思う。 たしかにピアノにかかっているエフェクトはイーノっぽい感じがするし、『Music for Airports』のB面に入ってる曲みたいな女性コーラスも随所に聞かれる。イーノ自身の作品は近年、流行のEDMのトレンドをあまりに独自すぎる解釈で吸収し、なんだかよくわからないアウトプットとしてでてくる……ような、まるで80年代のロバート・フリップのごとき味わいがある。逆に、EDMのトレンドのほうにイーノが持ってそうな要素を寄せていったらジョン・ホプキンスの今回のアルバムのような音として出てきそうな気もする。なんだかちょっとネガティヴな書き方になってしまったけれど、内容はすごく良くて、立て続けに4回ぐらいリピートで聴いた。こういうほんのり薄暗い感じの音がイギリスでは流行ってるんですかね。ジェイムス・ブレイク然り。

ジョルジュ・ミノワ 『悪魔の文化史』

悪魔の文化史 (文庫クセジュ) posted with amazlet at 14.02.07 ジョルジュ ミノワ 白水社 売り上げランキング: 440,539 Amazon.co.jpで詳細を見る 電車のなかで読んでたら人から変な風に思われそうなタイトルだが、キリスト教にとって悪魔とはなにものなのかを、を中心に、文学や20世紀の映画などで用いられる悪魔のモチーフについてまで取り上げる至って真面目な宗教史・文化史に関する本。旧約聖書では目立った存在ではなかった悪魔が新約聖書では急に登場回数を増やし、善なる神やキリストと対立しはじめるという整理はたしかにその通りだと思ったし(旧約聖書における神は、嫉妬深く良い存在か悪い存在かハッキリしない性格を持っている)、そして悪魔のイメージの成立史では、現在でいうイランだとかエジプトなどに存在していた異教の神々のイメージが色濃く反映していることなどいろいろと面白い。魔女狩りや悪魔払いについても詳しく記述されていて、へえ〜、となった。

最近買ったCDについて(2014年2月)

相変わらず本業のほうで多忙な日々が続いており、なかなか新譜をチェックする時間もとれないのだが、最近は営業で外回り中、渋谷等でお昼ご飯を食べたついでに中古レコード店にはいり、高速でモノを見ながら、めぼしいものを回収する……というゲリラか空き巣のような時間がとれるときがある。以下は、その猟盤の記録。 エイドリアン・オレンジ&ハー・バンド posted with amazlet at 14.02.07 エイドリアン・オレンジ&ハー・バンド 7e.p. (2007-09-07) 売り上げランキング: 228,271 Amazon.co.jpで詳細を見る ちょっと前に tdさんのブログで言及されていて 気になっていたもの。エイドリアン・オレンジはポートランド出身のSSWだそう。これはなんだか異形の音楽である。UKのNirvanaとかも思い出させるサイケデリアに、ダブ、あとフェラ・クティとかフィリップ・コーランなどを彷彿とさせるアフロなビートが自然に融合してしまっている……。あまりの独自な音楽っぷりに、これはアレか、アウトサイダー的なちょっと世界が違っちゃっているオッサンが発掘されたのか、と思ってしまったのだが、エイドリアン・オレンジさんはわたしと同世代の青年だったので一層驚愕してしまった。アメリカはやはり音楽的な魔境だ。 Y posted with amazlet at 14.02.07 The Pop Group WEA/Rhino (2007-04-17) 売り上げランキング: 65,882 Amazon.co.jpで詳細を見る 実は持っていなかったThe Pop Groupの『Y』(このバンドは人に借りた編集盤で聴いていた)。正直「この手のポストパンクの名盤らしきものをいまさら買わんでも……」とも思わなくもないが、聴けば必ずブチあがってしまうのだから、なにか心に刻まれてしまっているのだなあ。 Second Edition posted with amazlet at 14.02.07 Public Image Ltd. EMI Import (2011-06-27) 売り上げランキング: 72,431 Amazon.c

内田明香・坪井健人 『産後クライシス』

(009)産後クライシス (ポプラ新書) posted with amazlet at 14.02.01 内田 明香 坪井 健人 ポプラ社 売り上げランキング: 1,343 Amazon.co.jpで詳細を見る NHKの記者とディレクターによる新書を読む。ここで言われている「産後クライシス」とは、「幸福」のひとつの典型として描かれてきた出産を期に、夫婦関係が一気に冷え込んでしまう事象を指している。帯ではくわばたりえさんが、男性が読むべき本としてコメントを寄せているが(くわばたりえさんは美人なのではないか……と思いつつ)たしかに、これから子供を持つ/すでに持っている/今のところ予定なし、に限らず、男性が読んでおいて損はない本だと思う。女性について、わたしは知らなすぎる、と反省することは度々あって、この本もそういう反省を促す内容だった。