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近況報告

先月から本業のほうがなかなか忙しかったり居住環境が変わったりして、ブログ更新ペースが落ちているので、近況報告的な雑記を。まず、本業がらみでは、3月にBeaconユーザーシンポジウムというイベントで「Google App Engineを企業はどう使えば良いの?」という感じのテーマで研究発表をおこないます。こちらは参加費が結構かかる、かつ、開催地が滋賀、さらに当ブログを普段からご愛顧いただいている思想史関係の皆様にはまったく馴染みのないお話ですが、たまたまシンポジウムに出席される予定のブログ読者さまがいらっしゃいましたら発表会場に足を運んでいただければ幸いです。GAEについてザックリとどんなものかわかり、プラットフォームの特性を生かした使い方とそのコストについてプレゼンテーションする予定です。

さて、本業以外の活動ですが、ヒロ・ヒライさんのBH日記でもときどき伝えられているとおり、思想史・科学史関連の出版前原稿などを読んでコメントしたり、校正したりをおこなっています。ここまで17世紀の地球論についてまとめた論文を読みました。現在進行中なのは、ヒライさんが編者のひとりをつとめられている論文集です。これは収録論文のうち、現在5本をチェックしたところ。テーマは、スピノザ受容とか初期近代の怪物研究とか、イエズス会による布教戦略とか、記憶術とか……。どれも大変刺激的な内容で出版される日がとても楽しみです。専門的な内容、だけれども読めばなにかしら引っかかりが生まれる素晴らしい本になるでしょう。

最後に現在読書中の日本語以外の本について。現在以下の2冊を結構まじめに読んでいます。

A Culture of Conspiracy: Apocalyptic Visions in Contemporary America (Comparative Studies in Religion and Society)
Michael Barkun
University of California Press
売り上げランキング: 245,741


Eclogues. Georgics. Aeneid: Books 1-6 (Loeb Classical Library)
Virgil
Loeb Classical Library
売り上げランキング: 7,367

1冊目はアメリカの陰謀論についての政治思想史・社会学的研究書(英語)。陰謀論者の心性や陰謀論がどのように流布していったかについては目新しい記述がないけれど、どのように陰謀論文化が醸成されていったかはなかなか読ませる。こちらは主に通勤中に読んでいます。

2冊目はウェルギリウスの英語対訳付原文(ラテン語)で『牧歌』。最初英語対訳だけで頑張ってたんですが、韻文だし、神話上の登場人物とか地名とかは訳されててもよくわからないのでツラかった……。挫折しかかっていたところに、インターネット上で公開されていた訳注付日本語訳PDF、というありがたいモノが。これを片手に原文を読むとなんとなくわかった気になる! ラテン語は始業前に20分ぐらい時間作って読むのだけれど、ものすごい俗世から離れたリゾート気分になれるので良いです。

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テクノボン posted with amazlet at 11.05.05 石野 卓球 野田 努 JICC出版局 売り上げランキング: 100028 Amazon.co.jp で詳細を見る 石野卓球と野田努による対談形式で編まれたテクノ史。石野卓球の名前を見た瞬間、「あ、ふざけた本ですか」と勘ぐったのだが意外や意外、これが大名著であって驚いた。部分的にはまるでギリシャ哲学の対話篇のごとき深さ。出版年は1993年とかなり古い本ではあるが未だに読む価値を感じる本だった。といっても私はクラブ・ミュージックに対してほとんど門外漢と言っても良い。それだけにテクノについて語られた時に、ゴッド・ファーザー的な存在としてカールハインツ・シュトックハウゼンや、クラフトワークが置かれるのに違和感を感じていた。シュトックハウゼンもクラフトワークも「テクノ」として紹介されて聴いた音楽とまるで違ったものだったから。 本書はこうした疑問にも応えてくれるものだし、また、テクノとテクノ・ポップの距離についても教えてくれる。そもそも、テクノという言葉が広く流通する以前からリアルタイムでこの音楽を聴いてきた2人の語りに魅力がある。テクノ史もやや複雑で、電子音楽の流れを組むものや、パンクやニューウェーヴといったムーヴメントのなかから生まれたもの、あるいはデトロイトのように特殊な社会状況から生まれたものもある。こうした複数の流れの見通しが立つのはリスナーとしてありがたい。 それに今日ではYoutubeという《サブテクスト》がある。『テクノボン』を片手に検索をかけていくと、どんどん世界が広がっていくのが楽しかった。なかでも衝撃的だったのはDAF。リエゾン・ダンジュルースが大好きな私であるから、これがハマるのは当然な気もするけれど、今すぐ中古盤屋とかに駆け込みたくなる衝動に駆られる音。私の耳は、最近の音楽にはまったくハマれない可哀想な耳になってしまったようなので、こうした方面に新たなステップを踏み出して行きたくなる。 あと、カール・クレイグって名前だけは聞いたことあったけど、超カッコ良い~、と思った。学生時代、ニューウェーヴ大好きなヤツは周りにいたけれど、こういうのを聴いている人はいなかった。そういう友人と出会ってたら、今とは随分聴いている音楽が違っただろうなぁ、というほどに、カール・クレイグの音は自分のツ

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