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飯田泰之・中里透 『コンパクト マクロ経済学』


コンパクトマクロ経済学 (コンパクト経済学ライブラリ)
飯田 泰之 中里 透
新世社
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「コンパクト 経済学ライブラリ」というシリーズは、大学の初学者向け講義でも使いやすいように書かれた経済学の教科書シリーズ。山形浩生がそのなかの『コンパクト マクロ経済学』をオススメしていたので手に取ってみたんだけれど、本当に良い本でした。本文がページの見開きページの左側で、右側にはグラフや図などが配置されていて、しかも本文とグラフの説明が基本的には見開きのひとつのタブローのなかに収まっている、という構成の読みやすさ(図を参照するために、ページを戻ったりする必要がない!)が驚異的です。内容もIS-LM分析の基本から、AD-ASモデル、それからマクロ経済学の発展史から戦後の日本経済史までをカバーしており、これまでいろいろとマクロ経済学の本を読みかじっていて、わかっていなかったモノ、なんとなく言葉だけ知っている感じだったモノへの理解が進みました。徐々にお話が難しくなっていくのは仕方ないとしても、その難しくなっていくスピードも適切。『要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論』と一緒に読むと、ケインズが何を言わんとしていたのかが一層理解できるような気がしました。昔、金融経済知識を問われる銀行員とか向けの資格試験を受けたときに単なる言葉の暗記レベルで覚えていた言葉たちが「世の中の仕組み」としても分かってとても楽しかったです。

この辺の本も読み返したいです。


経済学という教養 (ちくま文庫)
稲葉 振一郎
筑摩書房
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経済学という教養



クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)
ポール クルーグマン
筑摩書房
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今後の学習計画としては、もう一冊ぐらい教科書的なものを読んだら、マンキューの経済学かクルーグマンの大きめなテキストに手を出そうかなあ、という感じ。

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