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『Newton』 12月号:相対性理論、むずかしい! ボリビアの超美麗写真がヤバい!




Newton (ニュートン) 2011年 12月号 [雑誌]

ニュートンプレス (2011-10-26)


ニュートリノが光速を超えた!? というニュースが、実は時計の同期に誤りがあったことが理由なのでは?*1などとも言われ、現時点でも検証が続けられている非常にホットなタイミングで、今月の『ニュートン』第1特集は「光速c 相対性理論の基本原理」。科学者たちはどのようにして光速を導きだそうとしたのか、そもそも光をどのように捉えてきたのか、という歴史的な確認から、最新の量子重力理論の紹介までかなりハードコアな内容となっています。光速度不変の原理についての詳細な説明がありますが、やっぱり難しくて、こういう現実には確認できないものを想像しながら研究している科学者ってすげーな……と思います。前半の科学史的な部分は光の速度の計測について、昔の人がものすごい力技で速度を計ろうとしたことがわかり面白かったですね。マクスウェルや、マイケルソン・モーリーの実験なども出てきて、ピンチョン・ファン的にも見逃せない。





それに劣らず「天を映す鏡 ウユニ塩原」の写真特集もすごい記事です。アンデス高地のウユニ塩原は雨期で冠水し、水深などの条件が揃うと、そこに溜まった水が全天を反射してものすごい幻想的な風景が観られる。この特集はそれを写真に収めたものです。文章ではその驚異の光景をお伝えすることはできませんが、これは度肝を抜かれます。現実がCGを超えて存在している、といってもよく感動的な記事。これに続く「仏教の聖地五台山」も良い写真が揃っていて、地球にはいろんなところがあるのねえ……とただただ呆然としてしまう。第1特集がかなりハードコアだったので、こうした写真で頭のなかで燻っている「むずかしい……」というモヤモヤをリフレッシュすることができるかもしれません。





今月は「乗り物の最新テクノロジー」という新しいシリーズが始まっており、初回は話題の最新ジェット機、ボーイング787の「解剖記事」でした。これもすごい面白くて、乗ってみたい! これでヨーロッパいきたい! と刺激を受けました。ヘッドアップ・ディスプレイやカーボンファイバーが未来っぽくて素敵。最新科学ニュースでは、ヤリイカの面白い生態(交尾関連)が興味深かったです。ヤリイカの雄には、ほかのカップルが交尾している間に隙をみて、自分の精子を雌に送ろうとするヤツらがいるらしい。そしてヤリイカの雌には体内と体外に精子の貯蔵器官があるそうで、生まれたときから3P対応みたいな感じになっているのがすげえ! と思いました。






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