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ジルベルト・ジルが良いんだぜ!




ロウヴァサォン
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ジルベルト・ジル
ユニバーサル インターナショナル (2007-06-06)
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現代音楽のイベントなどを開いたりしているわりには最近はずっとブラジル音楽ばかり聴いていて、正確にはディスクユニオン新宿ラテン・ブラジル館に週一ペースで通いつめているみたいな感じなのですが、ジルベルト・ジルがすごすぎて参ってしまっているわけです。彼の作品についてはカエターノ・ヴェローゾとの共演盤*1でしか知りませんでしたけれど、セクシーなブラジル男代表がカエターノだとするならば、ジルベルトはブラジルの太陽代表とでも言えましょうか。『Louvação』(1967)は彼のソロ・デビュー盤。奇しくもガル・コスタと共演した『Domingo』で同じ年にカエターノがデビューしておりますが、カエターノがジョアン・ジルベルト直系のしっとり系ボサノヴァで世に出てきたのに対し、ジルベルトも最初からアポロン感全開の音楽を打ち出しているのですね。この2人が互いを盟友と認め合っているのには、こうした本質的な違いがあるからなのかもしれません。






Gil & Jorge
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Gilberto Gil Jorge Ben
Polygram Records (1992-05-19)
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その歌声の力強さが400%の勢いで伝わってくるのが『Gil & Jorge』(1975)でしょう。こちらはジョルジ・ベン(現在はジョルジ・ベンジョール)との共演盤。この人も大変有名なミュージシャンだそうで、あまりに素晴らしいものですからジルベルト・ジルと同時に掘り下げていかねば! と思ってしまいます。かなり長尺の曲が収録されたアルバムなのですが、その長いトラックにはどれも2人の超絶的に伸びやかなヴォーカルが収められている。これがもう絶品で、これで魂に火がつかなかったらアナタ、不感症だよ! と罵りたくなるような一品。ほんとに喉に羽でもついてるんじゃないか、という自由なパフォーマンスに興奮してしまいます。






Nightingale
Nightingale
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Gilberto Gil
Rhino/Wea UK (2002-10-08)
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『Nightingale』(1979)も素晴らしいんですなあ。時代的にはフュージョンやAOR全盛という時代でしょうか、リー・リトナーやドン・グルーシン(デイヴ・グルーシンの兄)などアメリカのフュージョン系のミュージシャンが多数参加して、レゲエなんかも取り入れた非常に彩り豊かなアルバム。リラックスしたナベサダの『Orange Express』みたいな雰囲気があって最高なんです。これって時代が生んだ名盤なのかも。






声とギター ジル・ルミノーゾ
ジルベルト・ジル
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で、一気に時代は2000年代のアルバムに。『Gil Luminoso』(2006)は彼のディスコグラフィーのなかでもかなり新しいものになりますが、収録は99年。なんか自伝と一緒に発表される予定だったアルバムだったんだって。邦題には「声とギター」とあって、これはアルバムの内容の反映なのでしょう。ジルベルトがギター一本で弾き語りしたアルバムなのです。しかし、これはある意味深すぎるアルバム(私にはまだ早いのかもしれない!)と言ってもよく、彼のキャリアを振り返るようにセルフ・カヴァーが多数収録していて、それを落ち着いた声で歌い込んでいくんだから滋味ありすぎ。また声とギターの調和もすごくて、なんか体全身で音楽してる感がすごかったです。






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