集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#5 オネッティ『はかない人生』『井戸』『ハコボと他者』

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はかない人生 井戸 ハコボと他者 (ラテンアメリカの文学 (5))
オネッティ
集英社
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 集英社「ラテンアメリカの文学」第5巻は、ウルグアイのフアン・カルロス・オネッティ(1909-1994)の長篇『はかない人生』(1950)と『井戸』(1939)『ハコボと他者』(1960)という2本の中篇を収録。ここまでこのシリーズを読んでいて、独裁者やジャングルといったラテンアメリカっぽい題材のものが多かったけれども、オネッティの作品は「ラテンアメリカにもいろんなタイプの作家がいるのだな。マジックリアリズムばかりじゃないのだな」と思わせるものである。とにかく暗くて、救いがない、陰鬱なトーンが全体を支配している。





 「肌が茶色で、ヤニ汚れがついた歯並びはひどくて、服もめちゃくちゃ汚い、昔の西部劇に出てくる子悪人」のようなオッサンがいろいろと愉快でとんでもないことをやる……みたいな愉しい想像力の発露はここには存在しない。『はかない人生』などはとことん実存主義文学風であるし、オネッティのデビュー作(500冊刷って全然売れなかったらしい)『井戸』などは中原昌也のグチみたいな趣だ。「コイツは他の作家と一味違うぜ……!」という感じがする――しかし、それはそれ、これはこれ、といったところで、私はあんまりこれらの作品を楽しむことができなかった。読んだ時期が悪かったのかもしれない。満ち足りた生活をする者向けではない気がする。





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