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12月, 2009の投稿を表示しています

2009年に行ったライヴ・演奏会を振り返る

庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@鎌倉芸術館 - 「石版!」 東京楽友協会交響楽団第86回定期演奏会@すみだトリフォニーホール大ホール - 「石版!」 読売日本交響楽団第480回定期演奏会@サントリーホール - 「石版!」 BECK来日公演@NHKホール - 「石版!」 読売日本交響楽団第481回定期演奏会@サントリーホール - 「石版!」 Ginger does 'em all@鶯谷What's Up - 「石版!」 MAGMA 40th Anniversary Tour In Japan@Shibuya O-EAST - 「石版!」 ヘルムート・ラッヘンマン オーケストラ作品展「協奏二題」@東京オペラシティ コンサートホール - 「石版!」 日本の電子音楽 @草月ホール - 「石版!」 サントリー音楽財団創設40周年記念 サマーフェスティバル2009 特別演奏会 シュトックハウゼン<グルッペン> @サントリーホール 大ホール - 「石版!」 村治佳織が奏でるドイツ・ロマン派の夕べ@麻生市民館大ホール - 「石版!」 ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール - 「石版!」 YO LA TENGO @品川プリンス ステラボール - 「石版!」  今年行ったライヴ・演奏会の振り返り。これが2009年最後のエントリになります。ライヴは上記のほかに、虫博士バンド(インセクト・タブー)のライヴを2本観ています。今年は現代音楽の熱いイベントが多くて充実していました。とくにシュトックハウゼンの《グルッペン》、黛敏郎の《涅槃交響曲》が生で体験できたのは僥倖でした。来年は読売日本交響楽団の定期会員になるため、ほぼ毎月サントリーホールに足を運ぶことになります。これが今から楽しみ。

小室ファミリーを知らないものは不幸である

 先日、我が家に id:murashit 、 id:ayakomiyamoto 、そして id:Delete_All という同年代2人、オッサン1人を招きまして、ちょっとした食事会を開いたのですが、そのときご飯を食べながら爆音で聴いていたのがglobeとか安室ちゃんとかで。これが(お洒落ぶって)モダンジャズだのボッサだのを聴きながら食事するよりもずっと盛り上がってすごく楽しかったのでした。小室哲哉は偉大だ……と思った。小室ファミリー全盛期のころすでに洋楽を聴き始め、ボンジョヴィからプログレへ……という中二病全開の青少年期を過ごしていた私にもしっかりと小室サウンドが焼きついているのです。 globe posted with amazlet at 09.12.30 globe エイベックス・トラックス (1996-03-31) 売り上げランキング: 29477 Amazon.co.jp で詳細を見る  特に『globe』は、日本の音楽業界の最盛期のイケイケ感を幻覚させてくれるようで最高です。このアッパーな多幸感といったら、どんな懐メロよりも強度がありそう。しかし重要なのは、この幻覚を誰かと共有できる、ということなのでしょう。もしかしたら、いろんな意味で脚光を浴びている「ゆとり世代」には、この感覚が共有できないかもしれない……そう思うとちょっとした優越感さえ湧いてきます。この幻覚を共有できることが、iPodでもなく、Youtubeでもなく、テレビのスピーカーから小室サウンドが聞こえてきた時代を知るものの特権なのです。 自家製ピクルス 白菜の浅漬け 水菜と豆腐のサラダ 切干大根の煮物 カシューナッツとピーマンと鶏肉の炒め 鯛めし  ちなみにその日の食事会は以上のメニューを振舞いました。大好評だったので次はSPEEDを聴きながら手料理を振る舞う会を開きたいと思います。

最近読んだ漫画について

11人いる! (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 9110 Amazon.co.jp で詳細を見る 訪問者 (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 97979 Amazon.co.jp で詳細を見る イグアナの娘 (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 100721 Amazon.co.jp で詳細を見る 海のアリア (1) (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 130003 Amazon.co.jp で詳細を見る 海のアリア (2) (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 128016 Amazon.co.jp で詳細を見る 感謝知らずの男 (小学館文庫) posted with amazlet at 09.12.30 萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 212153 Amazon.co.jp で詳細を見る  今年は萩尾望都の漫画を結構読みましたが、年末に追い込みをかけるようにしてまた一気読み。こうして一気に読んでみるとこの作家が、少年性や中性的なキャラクターのほかに、「親から愛されない子ども」や「何らかの問題があって人を愛せない人」といった題材を集中的に描いていることに気がつきます。その問題の解決がうまく物語化されているのだなぁ、と思いました。特に『感謝知らずの男』はその治癒の物語の連作集と言えるのかもしれません。どれも面白く読みました。 西遊妖猿伝 大唐篇 1 (モーニングKCDX) posted with amazlet at 09.12.30 諸星 大二郎 講談社 Amazon.co.jp で詳細を見る  あと諸星大二郎の『西遊妖猿伝』も読み始めました(半分ぐらいまで読んだ)。コミック文庫版で全10巻というかなり長大な作品なのですが(しかもまだ新シリーズが連載中)グイグイ引っ張るパワーがものすごくて一気に読めてしまいます。『西遊

オザケンの射程、とか

LIFE posted with amazlet at 09.12.29 小沢健二 スチャダラパー EMIミュージック・ジャパン (1994-08-31) 売り上げランキング: 2112 Amazon.co.jp で詳細を見る  この前、近所のブックオフで『LIFE』を買いました。音楽関係のブログでは、00年代の音楽総括! みたいな記事がせっせと書かれているのでしょうけれど、いまさら渋谷系のお話……とはいえ全然リアルタイムではなかったため、実はよく知りません。でも、久しぶりにこのアルバム聴いてみたら、記憶への定着力みたいなモノがハンパではないことに気がついて驚きました。リリースから15年も経っているのか……と思うとなんだか恐ろしいアルバムだなぁ……という思いが一層強まります。  個人的な思い出話になってしまいますけれど、2004年ぐらいでしょうかね、自分がこのアルバムを一番繰り返して聴いてたの、って(大学二年生でした。この時点でリリースから10年経っている)。当時すでに歌詞の中に織り込まれた言葉のところどころに「古臭さ」を感じていたように思いますが「このアルバムは自分の青春時代の音楽として、深く心に刻まれるのだろう」という予感がありましたし、実際振り返ってみるとすごく懐かしい。すると、レイドバックしてやってきた90年代を過ごしてたんじゃねーか、俺は、という不思議な感じもしてきます。  しかしながら、こういった体験をされている方って他にもいるんじゃないかな、と思うのですよね。少なくとも私の同年代の文化系の方々には、結構通じる話だと思うのです。そして、今回聴き直して気になったことといえば、リリースから10年経っても、リスナーの心を打つことができる“オザケンの射程距離”だったのでした。リリースから15年経った現時点でもその射程の範囲内にあるのか、どうか。昨年ぐらいから20世紀に活躍した大物たちが次々と亡くなり、ようやく“20世紀の終わり”を感じるようになってきましたが、もしかしたらオザケンの射程範囲外へと時間が進むこともまた20世紀の終わりを確認するためのマイルストーンになるのかもしれません。 ミニ・スカート posted with amazlet at 09.12.29 加地秀基 カジヒデキ ポリスター (1997-01-29) 売り上げランキング: 134767

ウチのクリスマス・ケーキ

 今年はサダハルアオキのヴァランシア。友達が食べていたのを一口もらったことはあったのですが、1ホールを惜しみなくパクパク食べてみたら「サダハルアオキは天才だ!」と足をバタバタさせながら食べたくなる美味しさでした。オレンジのムース→チョコレート生地→チョコレートムース→サクサクの生地のコンビネーションが絶品過ぎます。ムースのなかには味の濃いオレンジ・ピールがところどころ紛れ込んでおり、また、上に乗っているフランボワーズと一緒に食べると酸味が素晴らしいアクセントを加えてくれます。さすがにフランスの偉い賞を取っただけあるなぁ……と感心したのでした。

THE BLACK CROWES/Before The Frost

Before the Frost/Until the Freeze posted with amazlet at 09.12.24 The Black Crowes Silver Arrow/Angelus (2009-08-31) 売り上げランキング: 1034 Amazon.co.jp で詳細を見る  先日2009年に購入した新譜を振り返ったばかりですが、買いそびれていたザ・ブラック・クロウズの新譜をうっかり買いそびれていたことを思い出して、速攻購入し聴きまくっているワタクシは大うつけ者かもしれません。なぜなら、このアルバムの内容がめちゃくちゃ良かったからです。昨年のアルバム『Warpaint』も良かったですが、今度はそれを更に凌ぐ勢い。  録音はよりすぐったブラック・クロウズのファンたちをスタジオに集め、すべてライヴで録ったらしいのですが、恐ろしいほどの完成度と演奏内容の濃さで「もしかしたら21世紀最強のライヴ・ロック・バンドはブラック・クロウズかもしれない……」と恐れおののきたくもなります。とにかく最高。しかもCDに同梱されているカードのシリアル番号をブラック・クロウズの公式サイトにある特設ページで入力すると、泣く泣くアルバム収録をあきらめざるを得なかったテイク(すべてCDに未収録曲)がまるごとダウンロードできる、という驚くべきサービスぶり。こちらの未収録曲には『Until the Freeze』というアルバムまでついていますから、ほとんどCD1枚のお金で2枚買ったようなお徳感。しかも内容まで最高のほうもCDに収録されている楽曲にまったく劣らないのですから、お前ら、絶対買ったほうが良いぞ! と鼻息荒く主張しておきます。  基本的にはルーツ・ロック感全開、ハード・ロック化したザ・バンドのような骨太なロックンロール路線は前作を踏襲しているのですが、シングル・カットもされている「I Ain't Hiding」(上記動画の曲)のディスコっぽい感じとかも新鮮で良かったです(なんかこの曲、フランツ・フェルディナンドみたいに聞こえてクスっときました)。アナログも切っているみたいなんだけど、この曲がたぶんA面の終わりみたい。ここまでの構成も素晴らしくて、ロック・アルバムを聴く楽しみを存分に感じさせてくれます。  第1曲目「Good Morning Captain」

ブーレーズのブーレーズを聴いた

Boulez: Pierre Boulez Edition posted with amazlet at 09.12.23 Pierre Boulez Sony BMG Europe (2009-10-19) 売り上げランキング: 172506 Amazon.co.jp で詳細を見る  引き続き *1 、ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念CDセットのお話。本日はブーレーズ御大の作品を御大自ら指揮したモノを集めたセットについてです。ここには《ル・マルトー・サン・メートル》はもちろんのこと、ブーレーズの代表曲ばかりが集められているのですが、個人的には《弦楽のための本》が収録されているのが嬉しかったですね。この作品、私が初めて聴いたブーレーズの作品でして(当時高校3年生)、2002年にマウリツィオ・ポリーニが「ポリーニ・プロジェクト」という企画で来日した際のコンサートで演奏されていて、そのライヴの模様がBSで放送されていたんですが、これは……! なんなのだ……! という衝撃を受けた気がします。 *2  今聴いてもこの作品は良い曲だなぁ、って思う。今でこそ「西洋前衛音楽の絶対王者」みたいにブーレーズは考えられているような気がしますけれど *3 、シュトックハウゼンやノーノ、クセナキスといった同世代に比べれば、その作風はかなりまろやかなものと言え、ロマンティックなものに聞こえます。《弦楽のための本》はその「まろやかブーレーズ」の象徴的作品のような気がし、そのまろやかさのなかに、20世紀音楽の始まりである新ヴィーン楽派との連続性を強さを感じてしまうのでした。「オペラ座を爆破せよ!」などという発言が有名なブーレーズは一見、ロマン主義に対する嫌悪感が強そうな風に思えるのですが、その内実は20世紀に活躍した作曲家のなかでもっともロマンティックな作曲家だったのではないか、と思えます。  あと《儀式――ブルーノ・マデルナの追憶に》という作品を聴いて「へー、こんな曲も書いていたんだなぁ」と思いました。これはなんだかお経みたいな作品で、ギロやゴングやサンダーシートや太鼓といったリズム楽器がそれぞれズレつつも、同じリズムを刻む上に、長い声明のような旋律が重なっていくのが面白い。ブルーノ・マデルナ *4 の追悼にふさわしい曲かどうかは分かりませんけれど、ブーレー

2009年に読んだ本を振り返る

 2009年も相変わらず雑多に読みました(小説を読む量はグッと減った)。プラトンを一気読みしたり、モリエールを一気読みしたり。自分のなかで「これを読むぞ!」とテーマを決めて気合を入れて読んだりして、気分を盛り上げるのが上手くなった気が。  これは特に面白かったなぁ……っていう本を5冊あげると以下のようになります。 ポール・クルーグマン『クルーグマン教授の経済入門』 - 「石版!」 エルヴィン・パノフスキー『イコノロジー研究』 - 「石版!」 炭山アキラ『入門スピーカー自作ガイド』 - 「石版!」 ジークムント・フロイト『モーセと一神教』 - 「石版!」 フランセス・アッシュクロフト『人間はどこまで耐えられるのか』 - 「石版!」  見事に一冊も小説が入りませんでした。『1Q84』すら。小説については年々読むものが偏ってきており、自分が知らないものについては読まないようになってきているし、読んでも「あんまり面白くないなぁ」とか思ってしまうようになっています。「常識は18歳までに得た偏見のコレクションだ」とはアインシュタインの名言ですが、そういうのを強く感じてしまったりする。  あとアドルノの新刊や復刊が結構あった気がしますが、どれも買っていません。 関連エントリ 2008年に読んだ本を振り返る - 「石版!」

2009年の新譜を振り返る

 とりあえず、今年2009年に購入した新譜をブログからリスト・アップしてみたら以下のようになりました(再発モノなどは含まず)。 SLY MONGOOSE/MYSTIC DADDY - 「石版!」 菊地成孔 南博『花と水』 - 「石版!」 Caetano Veloso/Zii E Zie - 「石版!」 SAVATH & SAVALAS/La Llama - 「石版!」 BOMBAY BICYCLE CLUB/Always Like This - 「石版!」 PRINCE/LotusFlow3r - 「石版!」 SONIC YOUTH/The Eternal - 「石版!」 にせんねんもんだい/Fan - 「石版!」 WILCO/Wilco (the album) - 「石版!」 足立智美/初期作品&ライヴ音源集 1994-1996 - 「石版!」 JUNK FUJIYAMA/A color - 「石版!」 YO LA TENGO/Popular Songs - 「石版!」 JIM O'ROURKE/The Visitor - 「石版!」 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール/ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ - 「石版!」 OS MUTANTES/Haih...Ou Amortecedor... - 「石版!」 ヒラリー・ハーン/バッハ ヴァイオリン・アンド・ヴォイス - 「石版!」  こうしてみるとクラシックの新譜を1枚しか買ってない、っていうのがなかなか異様。あんまり新しいアーティストにも触れなくなってきているし、そもそも情報をチェックしていないので仕方がないのかもしれませんが。来年はもうちょっと積極的に情報を集めてみようかな、と思いました。  今年一番驚いたのは15のムタンチスの新譜でしょうか。「新譜出したらしいよ」と聴いて「えーー! マジで!!」と叫びました。内容も良かった。カエターノ・ヴェローゾの新譜も良かったし、ブラジルのベテラン大御所ミュージシャンの活躍が嬉しい年だったのかも。ウィルコ、ヨ・ラ・テンゴ、ソニック・ユース、ジム・オルーク、プリンスと言った大好きなアーティストの新譜が聴けたのも良かった。どれも傑作だった気がするし、なんか順位がつけられないな。あえてベスト1を選ぶなら、やはりヴェローゾ御大の新譜だろうか。 ジー・イ・ジー

ヴェーベルン、カーター、ヴァレーズ、ベリオを聴いた

Webern & Varese: Pierre Boulez Edition posted with amazlet at 09.12.16 Pierre Boulez Sony BMG Europe (2009-10-19) Amazon.co.jp で詳細を見る  引き続き *1 、ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念CDセットのお話。今日はヴェーベルン、カーター、ヴァレーズ、ベリオの作品を収録したものを聴きました。6枚組(仕事が暇になったので家に帰って音楽を聴く生活を続けているのです)。これは雑多なまとめられ方をしたものだなぁ……という感じで、正直「現代音楽モノで、ハンパな枚数になっているのを抱き合わせて売ってやれ! 安ければ買うだろ!」という目論見しか感じられません。が、それはさておき廃盤になっていた(作品番号が付いているもののみ、ですが)ヴェーベルン全集がこの値段で手に入るのはお買い得感がありますし、買ってしまったのでした。まんまと乗せられてしまっているぜ!  ヴェーベルン全集はご丁寧に作品番号順に並べられており、なんだかお勉強みたいですが、久しぶりにドップリと聴いてみたら、とにかくあっという間に次の曲に行ってしまうので(ヴェーベルンの曲は一曲一曲がとても短いのです。グラインドコアみたいに)、大して印象らしいものが浮かんでこなかったりもするんですが、最後のほうでやたらと音質が悪い演奏が始まった! と驚いてライナーノーツを開いてみたら、1932年のヴェーベルン指揮による演奏が収録されていて「うほっ!」となったりしたのでした。彼が演奏しているのは、自身の編曲によるシューベルトの《ドイツ舞曲》。これが結構ヘタクソな演奏で(録音技術が貧弱だったせいで、弦楽器の人数が少なく、音程やアンサンブルの乱れがすごくわかる)和みます。演奏様式は19世紀的、というか。たっぷりとルバートをとって大変にロマンティックなものとなっています。バリバリの前衛音楽家だったのに、指揮は普通だ! というヴェーベルンのギャップにやられました。  カーターについてはよくわかりません。カーターの作品は昨年のピエール=ロラン・エマールの演奏会 *2 で聴いたことがありますけれど、そのときは対位法といったクラシックな技法に準拠しつつ、複雑なテクスチュアを鳴らす人……みたいな印象を

YO LA TENGO @品川プリンス ステラボール

Popular Songs posted with amazlet at 09.12.18 Yo La Tengo Matador (2009-09-08) 売り上げランキング: 2437 Amazon.co.jp で詳細を見る  ヨ・ラ・テンゴの来日公演を観に行きました。すごく楽しかったし、良いバンドだなぁ……って何度も思って、会場にいたたくさんのお客さんのなかでそういう感想が共有されていそうな感じがします。観ている間に「なんでこんなにロック・スターっていうイメージから程遠いバンドのライヴにこんなにたくさんの人が来ているんだろうなぁ」って思ったりもしたんですが(見た目的に、典型的なナード + 冴えないコンビニを経営している夫婦みたいだし)、なんかバンドのなかに存在している“つたなさ”みたいなものに宿命的に惹かれてしまうのかな、とか思った。ステージングなんかはもう大御所らしい安定感だし、フィードバック・ノイズの操作なんかも超カッコ良いんだけれど、どっかにつたない部分が残ってしまっている。でも、そうであるからこそ、いつまでも聴いていたいバンドであるような気がするのですね。観れば観るほど、不思議なバンドだなぁ……って思います。  アンコールは2回。で、2回目の1曲目は「Sugarcube」で、なんか感極まってちょっと涙が出ちゃいました。一気に脳内でPVの映像が再生されちゃったりして。

トマス・ピンチョン『ヴァインランド』登場人物リスト

ゾイド・ホィーラ:主人公。ヒッピーの生き残りで元サーフロックバンドのキーボード奏者。今は精神障害者のふりをして年金をもらうことで生計を立てている。 プレーリィ:ゾイドの娘。14歳。 スライド:プレーリィの同級生。 バスター:元きこりバーのマスター。 ヴァン・ミータ:ゾイドのいたバンドのベーシスト。ゾイドとは腐れ縁の仲。 ヘクタ・スニーガ:麻薬取締局捜査官。テレビ中毒にかかって精神がイカれている。 ラルフ・ウェイヴォーン・ジュニア:キューカンバー・ラウンジ(通称〈キューリ〉)の支配人。父親が裏社会の人間でその権力で良い暮らしをしている。 イザヤ:プレーリィのボーイフレンド。60年代カルチャーが好きなパンク少年。 スコット・ウーフ:ゾイドのいたバンドのヴォーカル兼ギター。 フレネシ:ゾイドの元妻。何かヤバいことになっているらしい。 デニス・ディープリィ:ヘクタが入院している病院の医者。 エルヴィッサ:山の上に住んでいる。ゾイドの車を借りた。女。 トレント:ゾイドの家の近所に住んでいる。ダットサンをキャンパーに改装した。詩人兼画家。 RC:御霊川(ファントム・クリーク)沿いにあるザリガニ料理のお店の亭主。 ムーンパイ:RCの妻。 ティ・ブルース:「蒸気のロバ」のシェフ。 リックとチック:ボーン・アゲン自動車改造工場のオーナー。 エウセビオ・ゴメス:通称“ヴァート”。合法性の疑わしい牽引トラック・チームの片割れ。 クリーヴランド・ボニフォイ:通称“ブラッド”。合法性の疑わしい牽引トラック・チームの片割れ。 ミラド・ホッブズ:風景造成会社の株主。元役者。 ブロドウェン:ミラドの妻。 ブロック・ヴォンド:ワシントンの連邦検察の偉い人。酒と涙と辛苦の月日をゾイドに与えた張本人」。 アーニィ・トリガマン:ヘクタの相棒。 バーバ・ハヴァバナンダ:プレーリィのバイト先「菩提達磨ピザ寺院」の夜の店長。 サーシャ・ゲイツ:フレネシの母。筋金入りのアカ。 グレッチェン:アシッド・ロックのクラブ「コジミック・パイナップル」のウェイトレス。ポリネシア人に扮している。 文茂田武(タケシ):カルマ調整師。ゾイドに救われた経験がある。 フラッシュ:フレネシの現在の夫。 ジャスティン:フレネシとフラッシュの間にできた子ども。 ハッブ・ゲイツ:フレネシの父親。元海軍に所属していた。第二次大戦後はハリウッド

シェーンベルクの声楽作品をモリモリと聴いた

Schoenberg: Pierre Boulez Edition 2 posted with amazlet at 09.12.15 Pierre Boulez Sony BMG Europe (2009-10-19) 売り上げランキング: 70001 Amazon.co.jp で詳細を見る  ピエール・ブーレーズ85歳&京都賞受賞記念ってことで一挙にブーレーズのCDが格安セットで再発されています。私もそのうちのいくつかを買いましたが、今はシェーンベルクの声楽曲を中心に集めた6枚組のセットを聴いています。未完の歌劇《モーゼとアロン》や(実は聴いたことが無かった)初期の大作《グレの歌》などが目玉なのですが、他にも色々と聴き所があってオススメです。特に初期と晩年の声楽曲を収録したディスク1が個人的には驚きの連続でした。初期の《地には平和》は《室内交響曲》第1番と同様の不思議な和声感が素晴らしい作品ですし、最晩年の《三つの民謡》は憑き物が落ちたような清廉な調性音楽で、とてもシェーンベルクの作品とは思えないほどです。このような“美しい作品”を経由することによって、またシェーンベルクの音楽の聴き方が変わってきてしまいそうなほど衝撃を受けました。あと、優れた対位法の感覚を持つ作曲家だったんだなぁ、と改めて思いましたね。アドルノは「シェーンベルクを理解できない者は、バッハを理解できない」とか言っていましたが、やっぱり一理あるんだなぁ、とか。  これに対して、ディスク2はバリバリの無調/12音音楽時代の声楽曲が収録されています。聴いていて面白いのは、とっても美しい《三つの民謡》の後に書いた《千年を三たび》、《詩篇第130番》、《現代詩篇》ですね。これらがほぼ同時期に書かれていたとはホントに信じがたいことでしょう。シェーンベルクのこういう傾向をアドルノは、後期のベートーヴェンと重ねて考えていたようです。その部分を引用してみます。 ゲーテが老年の特性と認めた「現象から段階的に身を引くこと」は、芸術の概念においては「素材の無差別化」である。後期ベートーヴェンにあっては、意味を失った慣習により作曲の流れが首をすくめながら進められるのだが、これらの慣習はシェーンベルク後期の諸作品における十二音技法と似たような役割を果たしている。(中略)厳格なる音楽は、社会に抵抗し、社会的真理の代表となる

集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#3 カルペンティエール『失われた足跡』『時との戦い』

失われた足跡 時との戦い (ラテンアメリカの文学 (3)) posted with amazlet at 09.12.14 カルペンティエール 集英社 売り上げランキング: 497467 Amazon.co.jp で詳細を見る  集英社「ラテンアメリカの文学」第3巻は、キューバのアレッホ・カルペンティエールの長編『失われた足跡』と、短編集『時との戦い』を収録しています。『失われた足跡』のほうは今年に入って読んだばかりなので飛ばしました。感想は こちら に書いてあります。今気がついたんですが、このシリーズの巻数って作家の生年順みたいですね。1、2巻は1899年生まれのボルヘスとアストリアス。で、カルペンティエールが1904年。世代的に彼もまた「マジックリアリズムの先駆者」のひとりであります。どうでも良いですが、お顔が優しいジャバ・ザ・ハットみたい。 (←カルペンティエールのお姿。晩年かな?)で、短編集『時との戦い』なのですが、うーん……これは微妙なところ。短編集の表題は、表題作となっている作品があるわけではなくて「時」というテーマをめぐって様々な手法を凝らしながら書いた作品を集めたコンセプトを指し示していると思うのですが、同じようなテーマで書いていたボルヘスと比べると幾分落ちるかな、と。長編はものすごく面白かったのですが、天は二物を……と言ったところでしょうか。今際の時から胎児まで逆に時間が進行する伝記(ベンジャミン・バトンみたいだ!)やら、様々な民族に残っている箱舟伝説の主人公が「洪水」のときに一同に会していた! というコントみたいな話やら様々で多彩ではあります。ただし、イマイチ決め手にかけるように思いました。

クセナキス 管弦楽作品集

クセナキス:管弦楽作品集(HMV)  昨日、楽しみにしていたヤニス・クセナキスの管弦楽作品を集めた5枚組ボックスセットが届いたので、もりもりと聴いています。このボックスセットには、「とくダネ!」でも紹介されたという大井浩明のピアノ独奏によるピアノ協奏曲、《シナファイ》の録音などが含まれており、また、クセナキスの実質的デビュー作となった《メタスタシス》(1954)から90年代の作品まで満遍ない選曲となっています。中心となっているのは70・80年代の作品のようですが、クセナキスをがっつりと聴いてみたい、と思っている人にはちょうど良いセットなのではないでしょうか。 *1  実のところ、これまで私もクセナキスの作品を集中的に聴いた経験がありませんでした。「ル・コルビュジエの元アシスタント」で「数学やコンピュータを使って作曲」し、「第二次世界大戦中に拷問を受けて片目を失明」し、「大編成のオーケストラを使用」して、「すごく複雑で演奏が難しい曲を書く」人。こういったイメージばかり(というか知識)が先行していたのですね。今回ボックスが届いて聴き始める前も「さて、どんなわけがわからん曲が入っているのだろうか……」とドキドキしていたのですが、聴いてみると割合聴きやすい曲が多くて、それがまず驚きでした。スコアが真っ黒になっていそう……という印象はやはり強く感じるのですが、意外にポップ、というか。  特に80年代の作品は、ダンサブルだとさえ思ってしまう。基本的には、大編成のオケを使用して凶悪かつ圧倒的な音響を構築する、という視点は揺るぎないようなのですが、時折、ペンタトニックのメロディらしきものが現れたりして驚かされます。そのなかでも《シャール》という1983年の作品は超カッコ良いですね。この曲の中では、もう混沌としか言えないほどポリリズムと不協和音でグシャグシャになる箇所があるのですが、そこがツボ。この部分をクラブで聴いてみたい。 *1 :《シナファイ》の映像

ピエール=シモン・ラプラス『確率の哲学的試論』

確率の哲学的試論 (岩波文庫) posted with amazlet at 09.12.12 ラプラス 岩波書店 売り上げランキング: 310585 Amazon.co.jp で詳細を見る  18世紀後半から19世紀初頭にかけて活躍したフランスの科学者、ピエール=シモン・ラプラスの本を読みました。本の解説によれば、この人は数学者としてとても有名で、とくに確率論においてはそれまでの確率論を統合しつつ発展させ、古典的確率論を体系化した、という大きな業績をあげた人だそうです。そのほかにも天文学でも大きな業績をあげている。まぁ、なんだか大変立派な方なのですが、自身の業績よりも「ラプラスの悪魔」やポケモンの名前の方で知られています。 ある知性が、与えられた時点において、自然を動かしているすべての力と自然を構成しているすべての存在物の各々の状況を知っているとし、さらにこれらの与えられた情報を分析する能力をもっているとしたならば、この知性は、同一の方程式のもとに宇宙のなかの最も大きな物体の運動も、また最も軽い原子の運動をも包摂せしめるであろう。  これが有名な「ラプラスの悪魔」についての、ラプラス自身による記述ですがこれはこの本の冒頭のほうに出てきます。あらゆる物事の法則を知っていて、あらゆる物事の情報を持っていて、それらを分析することができる知性があるならば、ソイツはなんでも分かっちゃうので、未来も予知できちゃうであろう……というのが彼の主張です。この考えは、後の量子論の研究によって否定されてしまうのですが、今なお魅力的ですね。ラプラスの思考は、超越的な理性を想定したもの、と捉えることができますし、彼が確率に執着していたのも、その理論によって物事の法則を帰納的に導き出し、そして超越的理性に近づこうとしたのではないか、とも考えられます。このあたりの動機はパノフスキーによるスコラ学に対するコメント「明瞭化のための明瞭化」に近いのかもしれない。  結構、頭を使わなければ理解できない箇所が多いので、本当に時間がある人向けの本ですが、丁寧に読めば読むほど面白いです。高校数学、あるいは各種試験で登場する確率の問題のネタ元みたいなものがよく分かったりします。サイコロやコインはもちろん、つぼの中にある色のついた玉といった例、このような言い回しは19世紀から変わらないものなのだなぁ……といっ

回鍋肉

 豆板醤(トウバンジャン)と豆鼓醤(トウチジャン)を間違えたが、気にしないで作った。美味しかった!  同じ間違いをしている人は他にもいるらしい。

ヒラリー・ハーン/バッハ ヴァイオリン・アンド・ヴォイス

バッハ:ヴァイオリン&ヴォイス posted with amazlet at 09.12.08 ハーン(ヒラリー) シェーファー(クリスティーネ) ゲルネ(マティアス) ユニバーサル ミュージック クラシック (2009-08-26) 売り上げランキング: 702 Amazon.co.jp で詳細を見る  ヒラリー・ハーンといえば、昨年のシベリウスとシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲の素晴らしい録音が記憶に新しいですが、今年も新しい録音を聞かせてくれています(日本盤は8月に発売されていたようです)。今回はバッハのアリア集、それも独奏ヴァイオリンが歌唱に伴うオブリガート楽器として活躍する曲を集めたアルバムです。比較的若い演奏家が、このようなアルバムを出すことはかなり稀有な例でしょう。ヴァイオリン協奏曲のポピュラーな楽曲については既に録音を一通り終えてしまった、というのもあるのかもしれませんが、やはり目の付け所が違うセレクトには演奏を聴く前から驚かされました。今後のクラシック演奏家界隈は、彼女のように自己プロデュース能力に優れた演奏家が活躍するのかもしれませんね。  演奏ももちろん素晴らしいもので、ヒラリー・ハーンの芯の強い音色でキビキビと演奏されるヴァイオリンは、この季節の凛とした空気にとてもマッチしているかのように思われました。また、クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)とマティアス・ゲルネ(バリトン)の歌唱も実に素晴らしい。豊かな歌声の旋律とヴァイオリンの旋律との対話は、まさにポリフォニー音楽としてのバッハの音楽を聴く愉しみというものが結晶化したかのような演奏であります。これを室内オーケストラ、チェンバロ、オルガンによる伴奏や通奏低音が支えているのですから、バッハの音楽のなかに三位一体的な世界観を錯覚したくもなります。

集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#2 アストリアス『大統領閣下』『グアテマラ伝説集』

大統領閣下 (ラテンアメリカの文学 (2)) posted with amazlet at 09.12.07 アストリアス 集英社 売り上げランキング: 438212 Amazon.co.jp で詳細を見る  集英社「ラテンアメリカの文学」第2巻には、グアテマラの作家、ミゲル・アンヘル・アストリアスの『大統領閣下』と『グアテマラ伝説集』が収録されています。巻末の解説によればアストリアスは、ボルヘス(アルゼンチン)やカルペンティエール(キューバ)らと同世代。彼もまた「マジックリアリズムの先駆者」とされているそうです。ガルシア=マルケスやフエンテス、リョサと言った才能が爆発的に羽ばたき始めるのは1960年代に入ってからのことですが、アストリアスの作品には「マジックリアリズムの先駆者」という評価に相応しい、“ラテンアメリカ文学の形式”の原型のようなものを強く感じました。『大統領閣下』は、1970年代になって多く書かれている「独裁者小説」(ガルシア=マルケスの『族長の秋』がその代表と言えましょう)のオリジナルでしょうしね。  『大統領閣下』は、ある晩に悪名高い一人の大佐が狂犬病にかかった乞食の手によって殺されるという事件からはじまります。大統領はこの事件を自分の地位を脅かす革命因子を根絶やしにするためのキッカケとして利用しようとします。その陰謀によって将軍、ミゲル・カラ・デ・アンヘルと、穢れなき少女、カミラの運命は翻弄されていく。独裁政治と政治的な腐敗を暴き出すジャナーリズム的なまなざしが、シュールレアリスムを経由した筆致と混ざり合うことによって、特別に力強い文学作品へと昇華されているように思いました。腐敗したシステムという悪がどのようにして、ひたむきな善を叩き潰していくのか。このテーマは今日的にも意義深いものでありましょう。  『グアテマラ伝説集』はアストリアスの処女作だそうです。この仏訳がポール・ヴァレリーに絶賛され、アストリアスはヨーロッパの文壇で一躍脚光を浴びることになるのですが「まぁ、こんなのがいきなり現れたら、そりゃあ驚くだろうなぁ……」という異教感漂う作品でした。南米大陸にヨーロッパの文明が流入する前に繁栄していた文化と、流入以降のキリスト教的な文化が混合して成立した神話の特殊性は、シュールレアリストでなくとも喜んだに違いなく、現に私も大変面白く読みました。